研究課題
挑戦的萌芽研究
起立に伴う自律神経機能の変化を、心電図による心拍変動から非侵襲的に評価し、老化関連因子との関係を明らかにすることで、自律神経障害がフレイルティリスクとなる可能性を明らかにすることが目的である。抗加齢ドック受診者を対象として5分間の起立前後に抗加齢ドック受診者を対象として5分間の起立前後に心拍をモニターし、起立負荷時の自律神経機能を連続的にパワースペクトル解析により定量評価した。心拍変動成分をパワースペクトル解析にて0.15Hzまでの低周波(LF)成分と0.15-0.25Hzの高周波(HF)成分に分解し、これにより自律神経機能をトータル成分(全自律神経機能)、HF成分(副交感神経機能)、LF/HF比(交感神経機能)に分けて評価した。安静時および起立時にそれぞれ定量化し、老化関連因子との関連性を調べ、さらに、他の負荷として、食後性血圧変化に伴う自律神経機能変化と比較した。食後性の変化として、食後1時間後には、有意な収縮期血圧の低下と心拍数の増加が起こる。しかし、それに伴う心拍の周波数成分の変化は大きくなかった(LF成分の変化 1.06倍、p=0.34, HF成分の変化 1.3倍、p=0.04)。一方、立位に伴う周波数成分の変化は、食事変化と比較しても有意に大きい(LF成分の変化 7.3倍、p<0.0001, HF成分の変化 3.2倍、p=0.0006)。これらの成績から、起立に伴う自律神経機能の変化は大きく、個人間の差を評価するのに適していると考えられる。しかし、これまでの成績では、大きな変化を示す起立後の低周波成分は、年齢とは有意な相関を示していない。今後、症例を増やして検討する必要がある。
4: 遅れている
使用した自律神経機能機器の不具合の修正に時間がかかり、研究期間内に十分例の症例の蓄積が出来なかった。25年度に実施できた患者数は、抗加齢ドック受診者約50名であった。機器の設定がうまくいかず、特に、心電図シグナルが安定して得られず、原因の追究に大幅な時間を要した。良好な心電図シグナルを得るには、胸部に電極を装着し、胸部誘導からのシグナルが必要である。抗加齢ドックでは、脱衣の関係で胸部誘導の装着が出来ないため、四肢誘導からのシグナルをパワースペクトル解析に用いた。プレリミナリーな検討では、四肢誘導から問題なく解析できていたが、実際の受診者を対象として研究を開始したところ、シグナルが不安定で、特に立位後にはほとんどデータとして取り込めないことが明らかになった。機器開発業者にも対応を依頼したが、心電図シグナルの感度upだけでは改善せず、最終的には心電図モニター機器のversion up の対策が必要であった。その結果起立時の心電図シグナルが安定してモニターできるようになるのに平成25年度の後半までかかってしまい、データの収集が大幅に遅れた。
これまでの検討では、起立に伴う自律神経機能の変化は、食事に伴う変化に比し大であり、自律神経の予備能を評価する方法として適当であると考えられる。研究を継続して、症例を重ね、初期の検討を行う予定である。
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