研究実績の概要 |
抗加齢ドック受診者を対象として3分間の起立前後に心拍をモニターし、起立負荷時の自律神経機能を連続的にパワースペクトル解析により定量評価した。心拍変動成分をパワースペクトル解析にて0.15Hzまでの低周波(LF)成分と0.15-0.25Hzの高周波(HF)成分に分解し、これにより自律神経機能をトータル成分(全自律神経機能)、HF成分(副交感神経機能)、LF/HF比(交感神経機能)に分けて評価した。安静時および起立時にそれぞれ定量化し、老化関連因子との関連性を調べた。現在まで190例の測定が終了しており、125例において解析を行った。 起立に伴い収縮期血圧は131±20mmHgから-1.2±12.3mmHg低下した。LF成分は、210±326から477±468 msec2へと有意に増加した。HF成分の変化は144±160から157±143 msec2で有意ではなかった。起立性の血圧変化はLF成分の変化と有意な正相関を示したが、HF成分の変化とは相関しなかった。ベースのLF成分 (r=-0.33, p<0.001)、HF成分 (r=-0.18, p<0.05)はいずれも年齢と有意な負の相関を示したが、立位後の各成分および立位に伴う各成分の変化は、いずれも年齢とは相関を示さなかった。 安静時のHFは脈波伝搬速度(r=-0.18, p<0.05)とLF成分は脳MRIによる白質障害(r=-0.25, p<0.05)と開眼片足立ち時間(r=0.22, p<0.05)と有意な相関を示した。立位後はHF成分(r=-0.22, p<0.05)、LF成分(r=-0.18, p<0.05)もいずれも脈波伝搬速度と相関を示したが、その他の老化指標とは相関しなかった。 これらの結果は、安静時の自律神経機能は老化指標と関連し、起立性の自立神経機能変化は血圧変化と関連性が高いことを示している。
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