研究実績の概要 |
自律神経は、生体のホメオスタシス維持に重要な働きをする。高齢者フレイルはホメオスタシス維持が困難となっている状況であり、自律神経機能障害が関与している可能性がある。 愛媛大学抗加齢ドック受診者288名(平均年齢67.9歳±10.2歳、男性132名)を対象として、高齢者フレイルの要因としての自律神経機能障害を、きりつ名人(クロスウェル製)を用いて立位変化に伴う心拍変動のパワースペクトル解析により検討した。立位に伴い上腕血圧は、128.5±18.6/71.6±11.3 mmHgから、1分後 128.2±17.8/76.8±11.1mmHg、3分後 127.5±17.6 /76.4±11.1 mmHgへと変化した。収縮期血圧の変化は有意ではなかったが、拡張期血圧は立位後有意に(p<0.0001)に上昇した。副交感神経機能を反映する心拍変動の高周波成分HF (0.15-0.4Hz)は、前値、1分後、3分後それぞれ、140.5±148.2, 134.3±161.0, 98.7±154.9 msec2, 交感神経・副交感神経機能を反映する低周波成分LF (0.04-0.15Hz)は、177.2±217.9, 428.4±453.9, 250.4±322.2 msec2 でありHFは立位3分後に、LFは立位後に有意(p<0.0001)に変化した。特にLFは、血圧変化に比し大きな変化を示した。 ベースのHF、LFおよび立位3分後のLFは、年齢以外に、開眼、閉眼片足立ち時間および重心動揺の指標である開眼、閉眼総軌跡長と有意な相関を示したが、血圧値とは相関しなかった。 心拍変動パワースペクトル解析により求めた自律神経機能指標HFおよびLFは、いずれも加齢により有意に低下するのみではなく、起立によりふらつきの指標と有意に関連し、転倒につながるフレイルに関連している可能性が示された。
|