研究課題
挑戦的萌芽研究
本年度は、(1)肥満症におけるグレリン自己抗体の精製、解析と(2)構造決定と正常および肥満モデル動物における精製グレリン自己抗体の解析を行った。患者血中の食欲促進ペプチドグレリンと、アシル基の無いデスアシルグレリンを区別して、それぞれの自己抗体を同定し、グレリンペプチド自己抗体は、各々のELISA法で同定し、IgA、IgG、IgM型に分別、精製した。遊離型および結合型の自己抗体を解析し、その親和性やグレリンシグナリングに及ぼす影響を、表面プラズモン共鳴(SPR)原理を用いたバイオセンサーを主に用いて解析した。細胞発現系を用いた解析は一部、連携研究者である国立がんセンター研究所上園により施行され、食行動や情動・認知との関連を神経心理学的に検討し、グレリンを含む血中ペプチドレベル、代謝産物、インスリン抵抗性や治療における変動、病態、合併症等との関連を解析しつつある。(2)に関しては精製グレリンペプチド自己抗体を、マウスに腹腔内投与し、食欲・体重調節やエネルギー代謝、不安等の情動、認知・学習に及ぼす影響を解析した。不安・抑うつ評価系としては、高架式十字迷路、オープンフィールドテストや強制水泳モデルを用い、認知・学習は受動回避試験でスクリーニングの後、空間認識を反映するモリス水迷路を用い、解析を行いつつある。動物の行動解析をより鋭敏に行うために、摂食・飲水量経時記録装置(K2-CABIN)を用いた。長期にわたり摂食・飲水量を記録することで、より詳細な解析が可能になるためである。肥満患者のグレリン自己抗体は、グレリンシグナリングに正の作用を及ぼすことを証明した。
2: おおむね順調に進展している
肥満症患者からグレリンシグナリングを増強させる自己抗体の同定に成功し、Nat Commun (2013)に報告することができた。
グレリンペプチド自己抗体の解析、および肥満モデル動物、マーモセットなどに対するペプチド・抗体医薬の意義の確立と応用を進める。自己抗体の構造決定のための単離が技術的に難しく、今種々のアプローチを行いながら、その克服に努力している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Nature communications
巻: 4巻 ページ: 2685
10.1038/ncomms3685