研究課題
本年度は、(1)肥満症におけるグレリンペプチド自己抗体の精製、解析と構造決定、(2)霊長類マーモセットにおけるグレリンペプチド自己抗体の解析、(3)肥満モデル動物などに対するペプチド・抗体医薬の応用を念頭に、研究の推進を行った。(1)肥満症におけるグレリンペプチド自己抗体の精製、解析と構造決定:クローニングしたグレリンペプチド自己抗体を肥満症で解析し、病態との関連を明らかにする目的であった。バクテリオファージライブラリーを用いて、肥満患者個人の抗体ライブラリーを作製し、グレリンペプチド自己抗体のクローニングを行った。ファージディスプレイ法を用いて患者血液由来の抗体ファージライブラリを構築し、バイオパンニング法により食欲調節ペプチド自己抗体の単離を行った。抽出・精製した自己抗体は、グレリンの作用を増強し(動物モデル)、グレリンシグナリングを増強する病態生理学的意義を有することを証明した(Takagi K, Nature Commun. 2013)。(2)霊長類マーモセットにおけるグレリンペプチド自己抗体の解析:精製した自己抗体の食行動や情動・認知に及ぼす影響を、げっ歯類と比較検討したいと考えている。マーモセットは、食餌性肥満モデルとストレプトゾトシンを用いた糖尿病・認知モデルを用い、今その実験系の構築を行っている。(3)肥満モデル動物などに対するペプチド・抗体医薬の応用:グレリンペプチド自己抗体をファージライブラリから大量に精製する。そのためには、ポリクローナル抗体とともに、モノクローナル抗体の作製が必須である。抗体の可変領域であるVHとVLをリンカーでつないだ一本鎖抗体(scFv)やFabの形でファージ表面へ提示(ファージディスプレイ法)し、構造決定も終了した。現在行っているのは、グレリンペプチドとの親和性の確認・単離であり、ペプチド一般の分子量の少なさから、このプロセスに時間を要している。今一歩の工夫が必要かとも考えている。
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Translational Psychiatry
巻: 4 ページ: 458
10.1038/tp.2014.98