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2013 年度 実施状況報告書

miRNA-33を標的とした新規抗HCV作用の検討

研究課題

研究課題/領域番号 25670357
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関横浜市立大学

研究代表者

留野 渉  横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (00644957)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードC型肝炎治療 / マイクロRNA33
研究概要

C型肝炎ウイルス(HCV)複製増殖細胞にmicroRNA-33b(miR-33b)阻害剤を投与しウイルス複製への阻害効果を検討した。遺伝子型1bのHCV-O株から開発され、全長HCV-RNAの複製を培養細胞内で再現できるレプリコンシステム、OR6を用いた。またOR6からインターフェロンによりHCVを除去したOR6cをコントロールとした。OR6、OR6cにはレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子が含まれ、HCV-RNA量とレポーター遺伝子産物であるルシフェラーゼ活性がよく相関するため、HCV-RNAの複製レベルをルシフェラーゼ活性の測定により簡便に測定できる。OR6にmiR-33b阻害剤(miR-33bと結合し拮抗阻害する核酸:miR-33b inhibitor)とコントロール核酸(miR-33b control)をリポフェクション法で遺伝子導入し、導入から72時間後、それぞれのHCV複製効率をルシフェラーゼアッセイ、リアルタイムPCR、ウエスタンブロットで検討した。OR6にmiR-33b inhibitorを導入するとmiR-33b controlを導入した場合よりルシフェラーゼ活性は顕著に低下し、リアルタイムPCRでも確認を行ったがHCV-RNA複製レベルは有意に低下した。一方OR6cではmiR-33b inhibitor及びmiR-33b controlを導入してもルシフェラーゼ活性は低値で両者に有意差は認めなかった。ウエスタンブロットではOR6にmiR-33b inhibitorを導入するとHCV構造蛋白(core)及び非構造蛋白(NS3)とも発現が低下した。今回の検討でmiR-33b阻害剤の投与により培養細胞内でのHCV-RNA複製レベルの顕著な低下を認め、これはmiR-33b阻害剤がC型肝炎治療の新たな治療選択肢となる可能性を示す重要な結果であると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HCV複製増殖細胞においてmiR-33b阻害剤の投与により培養細胞内でのHCV-RNA複製レベルの顕著な低下を認めることを確認した。これはmiR-33b阻害剤がC型肝炎治療の新たな治療選択肢となる可能性を示す重要な結果であると考えられ、この点は順調に進展している。
HCV感染肝におけるSREBP1を始めとした脂質代謝関連遺伝子の発現の程度、miR-33b阻害剤投与による脂質代謝関連遺伝子の発現変化を確認し、miR-33b阻害剤の作用機序についても検討を行った(下記推進方策の項に詳述)がこれについては再検討が必要である。
また交付申請の段階ではHCV感染増殖モデル(HCVcc)を用いてmiR-33b阻害剤のHCV感染効率や粒子放出への影響も平成25年度に検討する予定であったが、この点は現在まだ検討できておらず次年度の検討課題とするため、おおむね順調に進展している、とした。

今後の研究の推進方策

miR-33bは膜結合型転写因子SREBPと協同して脂質代謝を調節し細胞内コレステロールの恒常性を維持する。SREBP1は脂肪酸合成酵素(FAS)やACCなど脂肪酸合成に関わる遺伝子を制御する。SREBP2はHMG-CoA還元酵素(HMGCR)等コレステロール合成に関わる酵素やコレステロールの取り込み関わるLDL受容体(LDLR)を制御する。細胞内コレステロールが低下するとSREBP2の発現が亢進しHMGCRやLDLRの発現を上昇させ細胞内コレステロールを上昇させる。逆にコレステロール過剰な状態では転写因子LXRを通してSREBP1を活性化し脂肪酸の合成が促されコレステロールは脂肪酸とエステル化される。正常肝ではこの様にSREBP1とSREBP2が連携し細胞内コレステロールを一定に維持する。
miR-33b前駆体配列はSREBP1遺伝子の一部にあり、様々な切断過程を経て成熟型miR-33bが産生される。miR-33bはコレステロールの細胞外排出を促すABCA1の抑制、脂肪酸β酸化に関わるCPT1AやHADHB等の抑制に働きSREBP1と協同しコレステロールの恒常性維持に貢献する。今までの報告ではHCV感染肝でSREBP1は発現亢進、FAS、ACC等脂肪酸合成の酵素は発現亢進するのに関わらず、コレステロール合成に関わるHMGCR等も発現増加し、コレステロール、脂肪酸とも蓄える方向に働くという、HCVに有利である脂質豊富な環境を作り出している。HCV感染肝でのこれら脂質代謝関連遺伝子の発現、miR-33b阻害剤投与による脂質代謝関連遺伝子の発現変化を確認し、miR-33b阻害剤の作用機序の検討を目的とし、OR6、OR6cにmiR-33b inhibitor、miR-33b controlを導入してそれぞれ遺伝子発現の変化を検討したが、上述の今まで報告にあるHCV感染肝の遺伝子発現の変化について培養肝細胞での再現困難な部分がありmiR-33b阻害剤の機序検討に至らなかった。培養細胞が脂質を豊富に利用できる環境を再現するため、培養細胞に脂肪酸(オレイン酸)を添加し再検討する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] microRNA 33bを標的とした新規抗HCV作用についての検討

    • 著者名/発表者名
      留野渉、篠原義康、斉藤聡
    • 学会等名
      第50回日本肝臓学会総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京都千代田区)

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公開日: 2015-05-28  

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