研究課題/領域番号 |
25670364
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
大西 洋英 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00313023)
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研究分担者 |
真嶋 浩聡 秋田大学, 医学部, 講師 (10261869)
堀江 泰夫 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30282164)
三浦 光一 秋田大学, 医学部, 講師 (90375238)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | VAMP7 / トリプシン / オートファジー |
研究概要 |
急性膵炎の発症、進展には膵腺房細胞におけるオートファジーが深く関与していることが推測されている。一方、本研究対象であるSNARE蛋白ファミリーの中でもVAMP7蛋白はオートファジー機構の中でオートファゴゾームの形成の初期段階に不可欠な蛋白とされている。本研究において我々はまず最初に膵腺房細胞にVAKP7が発現している事を確認した。そして、急性膵炎の発症、進展におけるVAMP7の機能を検討すべく、VAMP7-FLOXマウスと膵臓腺房細胞特異的に発現するSPINK-3遺伝子のpromoterによりCre-recombinase を発現するSpink3-Creマウスを交配することにより、膵腺房細胞特異的VAMP7遺伝子欠損マウスを作製した。膵腺房細胞特異的VAMP7遺伝子欠損マウスにおける膵臓は、マクロならびにミクロの形態学的解析においては、コントロールマウスと比べても明らかな変化は認めなかった。一方、この膵腺房細胞特異的VAMP7遺伝子欠損マウスに対して、腹腔内にセルレイン投与いよる急性膵炎を惹起したところ、その膵炎の炎症程度はコントロールマウスに比べて著明に増悪していることが、病理学的検索にて認められた。更にその原因を調べるべく急性膵炎を惹起した本KOマウスとコントロールマウスの膵腺房細胞内のトリプシン活性を比較検討したところ、KOマウスの膵腺房細胞内のトリプシン活性がコントロールマウスに比べて急性膵炎惹起早期より著明に上昇していることを確認した。このことより、本KOマウスにおけるセルレイン惹起性急性膵炎の炎症増悪現象の一因にはトリプシン活性の上昇が考えられた。現在は、KOマウスにおけるセルレイン惹起性急性膵炎にみ止められたトリプシン活性の上昇とVAMP7遺伝子欠損によるオートファジー機構変化との関連を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、急性膵炎の発症に関与するSNARE蛋白の同定とその機能解析である。これまでの研究においてSNAREN蛋白の一つであり、かつ急性膵炎に深く関与していると考えられているオートファジー機構を制御する代表的蛋白でもあるVAMP7の膵腺房細胞特異的遺伝子欠損マウスをCre-LoxPシステムを用いてその作製に成功し、VAMP7の急性膵炎発症・進展における機能をin vivoにおいて解析するtoolを得たことは本研究遂行のための大きな成果であると考えられる。更にこの膵腺房細胞特異的VAMP7遺伝子欠損マウスに対してセルレイン膵炎を惹起してコントロールマウスと比較することにより、その惹起された急性膵炎の炎症所見に差異が認められた事はVAMP7が急性膵炎の発症・進展に関与している事を示唆するものである。よって、本研究の課題である急性膵炎発症・進展におけるSNARE蛋白の同定と機能解析は更に詳細な解析を進めてゆく価値がある研究であると考えられ、現状においては本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の解析は主にspink3-CreとVAMP7-floxマウスを交配することにより得られた、膵腺房細胞特異的VAMP7遺伝子欠損マウスを用い、そのマウスにセルレイン膵炎を惹起することによりVAMP7の急性膵炎発症・進展における機能を解析しており、今後も現在得られているデータの更なる詳細な分子生物学的解析を遂行いして行く予定である。一方、膵臓には腺房細胞以外にも膵管細胞、膵内分泌細胞が存在しており、これら細胞の急性膵炎の発症・進展に寄与していると考えられている。よって、今後は膵臓の各種細胞に発現しているPtfia遺伝子のpromoterによりCre-recombinaeの発現が制御されているPtf1a-CreマウスとVAMP7-floxマウスとの交配による、膵臓各種細胞の殆どにてVAMP7の遺伝子欠損をするKOマウスを作製して、VAMP7の急性膵炎における機能の更なる解析を進める予定である。 一方、急性膵炎発症に関与するVAMP7以外のSNARE蛋白の同定と機能解析も進めてゆく。これまで我々の報告で、急性膵炎のモデルマウスであるIRF-2 KOマウスの膵腺房細胞において、SNAP23, syntaxin2, syntaxin4などの蛋白発現が抑制されている事、一方それらのmRNAの発現は増強されている事を明らかにしている(Gastroenterology2011)。これらの現象から、各種SNARE蛋白の急性膵炎の発症・進展への関与が各々の転写レベルにてなされているのか、または発現蛋白レベルにてなされているのかが本研究において解決なされねばならない課題と考えられる。よって、今後は急性膵炎における各種SNARE遺伝子ならびに蛋白の転写・発現を制御する因子の探索をも本研究の重要なテーマとして解析してゆく予定である。
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