研究課題
挑戦的萌芽研究
近年の免疫統御療法の進歩により,炎症性腸疾患の治療制御が向上している.現在,より長い寛解導入を目指した粘膜治癒が治療目標となっているが,損傷した上皮細胞を再生する治療法の開発には課題が多い.我々は,腸管上皮幹細胞を体外で培養するオルガノイド培養技術を開発し,ヒト炎症性腸疾患の治療を視野に入れた粘膜再生治療技術の創出に取り組んでいる.マウス腸炎モデルにおいてGFP標識腸管上皮オルガノイドを経肛門的に投与し,GFPを発現する生着腸管上皮と腸炎の臨床症状の改善が観察された(Yui S et al. Nature Mecicine). しかしながら,マウスと異なり,ヒト炎症性腸疾患では内視鏡的投与による再生治療の実現性が高いと考えられる.本研究では前臨床試験として,大動物を用いた内視鏡的なオルガノイドのデリバリー技術を目指す.ブタ腸管粘膜より採取した腸管上皮は我々の開発した培養プロトコール(Sato T et al. Nature 2009, Sato T et al. Gastroenterology 2011)の改変によりオルガノイドを培養し,永続的な増殖に成功した.また,オルガノイドをGFP標識し,内視鏡的な観察に成功した.内視鏡的粘膜切除法を用いて潰瘍を人工的に作成し,オルガノイド投与を行ったが,潰瘍時に形成される白苔と著明な炎症反応により生着は困難であった.現在,別の方法により,ブタ腸管粘膜に炎症性腸疾患粘膜を擬似化する粘膜損傷モデルを構築している.
2: おおむね順調に進展している
本研究ではブタ腸管上皮からのオルガノイド培養を確立した.また,採取から移植投与までの過程を内視鏡を用いて行うことに成功した.ブタなどの大動物はマウスなどの小動物と異なり,同時に多条件の検討をすることが困難であるが,これまでの培養技術開発のノウハウと施設内での内視鏡検査設備を最大限に利用することにより順調に研究を進めることができた.
最も困難なステップである,投与オルガノイドの生着の成功を目指す.ブタは免疫不全動物を用いることができないため,また,臨床応用を視野に入れ,自家移植を行っている.移植のための粘膜損傷方法の改善と移植オルガノイドの投与方法を工夫をすることにより,年度内での成功を目指す.
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