研究課題
平成25年度はHCVコア蛋白がE3 ubiquitin ligaseであるParkinと結合してミトコンドリア特異的オートファジー(マイトファジー)が阻害されることを明らかにした。このHCVによるマイトファジーの阻害はHCVによる酸化ストレス誘導の根幹をなす病態と考え、当初HCVコア蛋白と結合するParkinの責任領域を決定し、この領域を含むParkinのdecoy蛋白を発現させることで、内因性のParkinによるマイトファジーの回復を目指した。しかし、本研究過程で鉄キレートによる細胞内の鉄欠乏が、PINK1/Parkinのシグナル経路とは独立してマイトファジーを誘導するという論文(EMBO reports 2013)を見いだした。HCV-JFH1株感染細胞に鉄キレート剤(Deferiprone, DFP)を添加したところ、細胞内やミトコンドリア内Parkinの発現量に影響を及ぼすことなく、LC3-IIの発現が増強し、マイトファゴソームの数が増加した。これらの成績はHCV感染下でも鉄キレートはマイトファジーを誘導しうることを示すものである。また、ミトコンドリア内の2価鉄を特異的に検出する蛍光プローブ(Ac-MT-FluNox1)(岐阜薬科大学との共同研究)を用いて、ミトコンドリア内の2価鉄の定量を行った。HCV感染細胞は非感染細胞に比べてミトコンドリア内の2価鉄が多く、またDFPによりHCV感染細胞、非感染細胞ともにミトコンドリア内の鉄が用量依存性に減少することが明らかとなった。今後は、ミトコンドリア内の2価鉄量とミトコンドリア機能(電子伝達系複合体の活性やATP産生量)との関係を明らかにし、マイトファジー誘導にどのような影響を与えるかを明らかにするとともに、HCVトランスジェニックマウスを用いて鉄キレートによりマイトファジーの回復をin vivoでも検討する。
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