マクロファージはダイナミックに機能と形質を変化させ、心血管病の慢性炎症プロセスの進展に中心的な役割を果たす。しかしながら、そのダイナミズムを制御する分子機構はよく分かってない。非翻訳RNAは遺伝子発現に多面的に作用し、細胞機能を制御することが推測されているが、長い非翻訳RNA(lncRNA)の機能はほとんど分かっていない。短いmiRNAについてもマクロファージにおける役割は分かっていない。本研究計画では、慢性炎症においてマクロファージのダイナミクスを制御するncRNAを同定し、その機能を解析することを目的として検討を進めた。 ①グローバルなncRNAの同定とマクロファージ形質変化に伴う発現変化の解析を行った。培養マクロファージを刺激し発現RNAをRNA-seqならびにmiRNA arrayで解析した。その結果、これまで報告されていない長鎖非コードRNA(lncRNA)を1000種以上同定した。 ②Ago2及びPU.1に結合するRNAをRIP-seq法によりグローバルに解析した。その結果、多くのlncRNAがPU.1に結合することを見いだした。 ③同定したmiRNA、lncRNAの機能解析をノックダウンと過剰発現を用いて進めた。特に2種のlncRNAについて、マクロファージのLPS刺激における応答を制御することを見いだした。 ④in vivoにおける意義の解析を進めるため、腎障害モデル、心不全モデル等のin vivoモデルにおける非コードRNAの発現を検討した。その結果、in vitroの系で同定した機能性lncRNAが組織傷害モデルでも発言していることを確認した。in vivoにおいても、傷害刺激によって発現が誘導されており、マクロファージ機能を制御している可能性が高い。
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