研究課題/領域番号 |
25670392
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
砂川 賢二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50163043)
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研究分担者 |
新井 しのぶ 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30529970)
井手 友美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90380625)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カルシウム / デヒドロゲナーゼ / 筋小胞体 |
研究概要 |
本研究は、より心筋の構造的な変化を鋭敏に捉えることができる新たな心不全診断マーカーの確立およびその役割の解明を目指すものである。申請者らは多様な重症度を有する患者心筋からマイクロアレイによりその左室拡大、収縮低下に伴って極めて鋭敏に変動する因子であるdehydrogenase/ reductase (SDR family) member 7C (DHRS7C)を同定した。 平成25年度には筋芽細胞(C2C12)にDHRS7C過剰発現、変異株を用いて、その発現調節メカニズムの解析を行った。DHRS7Cの過剰発現細胞では、筋小胞体にその大部分が存在していることが明らかとなった。また、その機能解析として、DHRS7Cの変異株では、細胞内Ca2+の過負荷を認め、それは細胞外およびSRからのCa2+流入によるものであることが明らかとなった。また逆に、過剰発現では、これらのCa2+流入が抑制された。これらの細胞は、アンジオテンシン IIおよびエンドセリン による細胞肥大に対して、変異株は促進し、過剰発現細胞株は抑制を示した。つまり、DHRS7Cが、細胞内Ca2+を制御する分子として重要であることが示唆された。 また、サンドイッチ法ELISAによるDHRS7Cの定量方法の確立を行うため、DHRS7Cの抗体を作成し、その基礎データを取得した。健常者の血液中DHRS7Cの測定が可能であったが、現在感度および特異度をあげるための条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、新たな機能未知分子であるDHRS7Cを同定し、その細胞内での発現部位(筋小胞体に局在)、Ca2+制御機構について、明らかにした。 サンドイッチ法ELISAによるDHRS7Cの定量は、蛋白合成は問題なかったが、抗体の特異度が低かったが、これも、複数の方法により採取することで、ようやく免疫学的解析に使用可能な抗体が得られた。 本研究による平成25年度進捗として、筋小胞体によるCa2+制御において、DHRS7Cが重要な役割を有していることが示されたことがあげられる。 次年度は、これらの結果をふまえて、DHRS7Cの測定をさらに精度が高いものとするためのプロトコールの確立を行い、また、同時に、筋芽細胞に加えて、心筋細胞における役割を明らかにし、トランスジェニックマウスの解析も加えて、分子内シグナルに及ぼす役割を明らかにする。 これらのことから、当初予定していたとおりの結果が得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回の科学研究費により、初年度(平成25年度)は、DHRS7Cに関する基本データの取得を行うために、遺伝子操作により過剰発現および変異株の樹立を行うことで、その細胞内の動態、分子的役割について明らかにした。平成26年度は、正常者のみではなく、患者血清を用いた解析方法の確立をさらにすすめて、病態との比較を行うための解析を進める予定である。 ELISAについては、血清内の夾雑物の除去がポイントになることが予想されているが、血清処理および抗体処理の工夫により解決可能と思われる。 また、細胞内のCa2+の制御における役割について、よりvivoに近いモデル(圧負荷、容量負荷)におけるDHRS7Cの役割を明らかにするため、過剰発現マウス、ノックアウトマウス(ほぼ樹立できた)を用いて、病態におけるDHRS7Cの役割を明らかにする予定である。
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