研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、特殊な痙攣を誘発することによりたこつぼ心筋症を発症するラット・マウスモデル(出現性65%)を開発し、心エコーによる観察には、専用のVevoエコーを使用し、多心拍重ね合せのslow motion画像モデルを用いることにより、非侵襲的に上質の心エコーの動画画像を利用した客観性の高い評価法を確立した。これまでに、偽狂犬病ウイルスを用いて、左室心尖部を支配する交感神経の中枢経路を解析した結果、注入された物質は左室心尖部、交感神経節後神経、左側の星状神経節を介し、延髄、扁桃体、視床下部へと伝播していた。これより左室心尖部を支配する交感神経中枢が同定可能となった。さらに、交感神経中枢部におけるDNAマイクロアレイによりCCl2が優位に上昇していることを確認した。さらに、トランスクリプトーム解析によりc-fos等の急性期蛋白群の増加を見出した。また、たこつぼ心筋症モデル動物の心筋および星状神経節の免疫染色よりNPY(ニューロペプタイドY)の発現が観察された。
2: おおむね順調に進展している
普遍的なモデル動物の確立がこれまでの大きな課題のひとつであったが、本研究では痙攣誘発性の心機能障害モデルの作成に成功した。このモデル動物を用いて、交感神経中枢神経細胞を介した心機能障害のメカニズムの解明が可能となり、具体的には炎症細胞の浸潤、さらには、交感神経遠心路を介した中枢から心臓に至る経路においてNPYというペプチドホルモンの発現を認め、これまでにない知見が得られている。また、これらの成果を国際学会等に発表するなど業績面での進展も順調であると評価している。
これまで得られた成果から、さらなる分子生物学的なメカニズムの解明のため、病態に関与している物質を脳内に直接注入する実験や遺伝子組み換え動物による機能の解析などを予定している。また、培養心筋細胞を用いて関連物質が心筋細胞に与える影響などを詳細に評価し、ストレス負荷時に誘発される心機能障害の機序を解明する予定である。さらに、これまでの成果をまとめ、論文化することも目標に、合理的かつ論理的な実験の遂行を推進していく予定である。
平成25年度にin vitroの実験系(ラット新生仔心筋細胞)で本研究の標的因子であるペプチドの作用を検討した結果、ある一定の成果が得られたが、当初の計画以上にin vitroの実験検討に遅延をきたし、vivoの実験系が進められなかったため。このため、vivoの実験系の再検討と遺伝子改変マウスを用いた実験系に用いる消耗品費、および国際学会参加、論文発表に際しての投稿料に充てる予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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