研究課題/領域番号 |
25670397
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牧野 伸司 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (20306707)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 熱ショックタンパク / 心筋症 / 房室ブロック |
研究概要 |
進行性心臓伝導障害は、進行性の房室ブロック・脚ブロックという心電図所見を特徴とし、心臓刺激伝導系の線維変性によって突然死をきたす疾患である。進行性家族性心臓ブロックは、まれな疾患であるために遺伝学的手法を用いた病因は把握できていない。 60歳男性の10年間の完全房室ブロック発症率は0.07%と比較的高率であるが、心筋症・虚血以外の原因については調べられずにペースメーカー挿入治療が行われている。ペースメーカーは機械本体の値段が150万円前後する。年月が経つと電池切れになり機械本体を交換しなくてならない。新規と交換を合わせると日本では年間約6万件のペースメーカーが挿入されている。そのために費やされる医療費は900億円である。ペースメーカー本体以外に手術に要する賃金を加えると超大な税金が使われている。 進行性家族性心臓ブロックは、まれな疾患であるために正確な有病率や原因は不明である。我々はDNA点変異を誘発するアルキル化剤を用いたゼブラフィッシュ変異体スクリーニングから、ヘテロ変異の成獣でも房室ブロックを示す突然変異体 (nbl) を樹立した。ポジショナルクローニング法により、nbl変異体はheart shock protein 60(hsp60)遺伝子に点変異があることを発見した。ホモnbl変異体ではHsp60のloss of functionにより、房室結節にアクリジンオレンジ染色陽性の多数の死細胞が存在することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境ストレスに応じて房室ブロックを示す突然変異体 (nbl) が樹立できていること。 ポジショナルクローニング法により、nbl変異体はheart shock protein 60 (hsp60)遺伝子に点変異があることを発見できていること。 一年以上にわたって表現型が安定して子孫に伝達されていること。 房室伝導障害を示す家族性肥大型心筋症の家系で既知原因遺伝子に変異のない家系についてhsp60遺伝子のスクリーニングを行ったところ、3人の突然死を含むhsp60遺伝子に点変異を有する家系を発見できていること。
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今後の研究の推進方策 |
Motion vectorは、実体顕微鏡下で観察される物体を、デジタルカメラの限界までビデオフレームと画素数を細かく記録して、同じ点が動いている方向とスピードを解析するソフトである。この技術を用いて、nbl変異体と野生型ゼブラフィッシュの房室伝導機能を定量化する。同様に、nbl変異体で発見された変異とヒトで発見された変異を有するHsp60をラット心筋培養細胞に強制発現させて、活動電位と収縮の変化について、培養細胞でも定量化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異体ゼブライッシュの表現型の解析と房室結節機能評価を完了する予定であったが、ヘテロ変異体ゼブライッシュを掛け合わせた胚がすべて♂化していることが判明し、野生型のゼブラフィシュと再度交配を行なうために遅延が生じた。 変異体ゼブラフィッシュ、野生型ゼブラフィッシュの維持費、餌代、遺伝子型決定のための費用として使用する。
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