研究課題
本研究は、房室ブロックを示すゼブラフィッシュnbl変異体と房室伝導障害を示す家族性心筋症を用いてHsp60機能不全による房室ブロック発症の機序解明を行い、完全房室ブロックに対する薬物療法の道を開くことを目標としている。進行性心臓伝導障害は、進行性の房室ブロック・脚ブロックという心電図所見を特徴とし、心臓刺激伝導系の線維変性によって突然死をきたす疾患である。進行性家族性心臓ブロックは、まれな疾患であるために遺伝学的手法を用いた病因は把握できていない。健常な60歳男性の10年間の完全房室ブロック有病率は0.07%と高率であるが、心筋症・虚血以外の原因については調べられずにペースメーカー治療が行われており、薬物療法は存在しない。我々はゼブラフィッシュの変異体モデルから房室ブロックが遺伝的に発症する可能性について検討した。房室伝導不全を示すヒト拡張型心筋症家系で同様の変異が発見できたことから、hsp60経路は動物種を超えて房室結節と心臓自律神経をつなぐ心臓神経伝達機能調節の中心を担っていることがわかった。
3: やや遅れている
ヘテロ変異体ゼブラフィッシュを掛け合わせた胚がすべて雄化しているトラブルがあったが、野生型ゼブラフィッシュとの再交配により、ストレスに応じて房室ブロックを示す突然変異体が再現できている。ポジショナルクローニング法により、nbl変異体はheart shock protein 60遺伝子に点変異があることを発見できており、2年以上にわたって表現型が安定して子孫に伝達されていること、房室伝導障害を示す家族性肥大型心筋症の家系で既知原因遺伝子に変異のない家系についてhsp60遺伝子のスクリーニングを行ったところ、3人の突然死を含むhsp60遺伝子に点変異を有する家系を発見できている。
nbl変異体で発見された変異とヒトで発見された変異を有するHsp60をHEK293細胞に導入した細胞において、ミトコンドリア機能、アポトーシスや細胞増殖について調べて、研究成果をまとめて論文として報告する。
当初は変異体動物を35度のインキュベーター内で飼育することにより房室ブロックの表現型が得られていた。使用インキュベーター機種を変更後、房室ブロックの表現型の再現性が得られなくなった。実験再現性が得られなくなった原因究明のため、遺伝子型解析、野生型動物との掛け合わせなどにより解決を図った。新しい条件下で表現型を得るために温度や時間の条件設定を再度おこなったために、実験遅延が生じ未使用額が生じた。
抗体や試薬、プラスチック類、実験用動物費、論文別冊などの消耗品費に使用する予定である。
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J Am Heart Assoc.
巻: 6 ページ: 1-25
10.1161/JAHA.114.001263.