研究課題/領域番号 |
25670402
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10226681)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | BHD症候群 / フォリクリン / 遺伝子変異 / 遺伝子発現 / タンパク定量 |
研究実績の概要 |
BHD症候群(BHDS)の診断におけるフォリクリン(FLCN)蛋白質定量の意義を確立するため、研究1年目(平成25年度)において、末梢血単核球(PBMC)を蛋白源としてウェスタンブロッティング法(WB法)にてFLCNを定量する方法を確立した。FLCNに対する抗体はN末端抗体とC末端抗体の2種類を用い、対照蛋白質としてリボソーム蛋白、アクチンの2種類を使用した。BHD症候群では、FLCN遺伝子の胚細胞遺伝子変異により生じるため、すべての体細胞は野生型FLCN遺伝子と変異型FLCN遺伝子を各々有する。従って、PBMCでは正常なFLCN蛋白と異常FLCN蛋白(多くの場合、truncated immature protein)が発現し、N末抗体では野生型FLCNと変異型FLCNの2種類、C末抗体では野生型FLCNのみ検出できることを期待し、診断応用の可能性を検討した。BHDS症例のPBMCに応用したところ、①変異型FLCNに相当するバンドはWB法ではほとんど検出されなかった。変異型FLCNは細胞内の品質監視機構により速やかに分解されるの可能性が示唆された。②N末抗体、C末抗体の両方で認識される野生型FLCN由来のバンドは健常者に比して約1/2に減少していると予想していたが、リボソーム蛋白あるいはアクチン量で校正したフォリクリン量は、健常者のそれに比べて必ずしも減少はしていなかった。さらに、日本人に多い3つのFLCN遺伝子変異について、複数例ずつWB法で検討したところ、同一遺伝子変異でありながら、野生型FLCN発現量に個人差がある、ことが判明した。これらの結果は、PBMCにおける野生型FLCNタンパク量は遺伝子発現量以外の因子により調節を受け、個人差があることが示唆している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の成果をもとに、2年目では患者検体でFLCN発現量を実際に定量する研究を実施した。その結果、一定の成果は得られたが、当初の研究を発想した仮説とは異なる結果になった。すなわち、PBMC内でのフォリクリン発現は野生型遺伝子量に依存する、と想定していたが、タンパク量には個人差があり、量を定量するだけでは診断根拠にならないとの結果となった。上記のような研究の遂行そのものは順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究成果は、当初の研究発想時の仮説とは異なるものであったため、3年間の平成27年度では、異なる視点でBHDSの診断根拠となる候補指標をあらたに探索する。予定する検討としては、BHDS患者の気胸手術時に得られた肺組織のホルマリン固定標本をもちい、タンパク質を抽出後、プロテオミクス解析を行うことを予定している。肺癌患者手術時の非癌部正常肺組織から同様に処理して得られるタンパク質プロファイルと比較検討し、BHDS肺に特異的プロファイルが得られるかどうかスクリーニングする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究費に回すことで、最終年度の研究をより充実することが可能であると判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
プロテオミクス解析試薬は高価であるため、本年度で無理に使い切ることはしなかった。
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