研究課題
BHD症候群の病因は第17染色体上に存在するFLCN遺伝子の生殖細胞系列遺伝子変異であり、診断確定のためにはFLCN遺伝子検査により遺伝子変異を証明することが必要である。FLCN遺伝子は14個のexonよりなり、比較的小さな遺伝子であるが、診断のためには、1)14個のexonすべての核酸配列を読む、2)14個のexonについて変異の有無をスクリーニングした後、変異が疑われるexonのみの核酸配列を調べる、のどちらかを行う必要がある。さらに、3)FLCN遺伝子の一部を含んだゲノム上での欠失が病因となっている場合もあり、1)あるいは2)では異常を検出できなくても、3)の可能性を考えて各exonのコピー数を検討する必要がある。現状の診断過程では労力と時間を要するため改良が必要である。本研究ではFLCN遺伝子の病因となる変異の多くはpremature terminationを生じ正常なfolliculin蛋白質量が減少すること、FLCN遺伝子は末梢血リンパ球でも発現していること、から末梢血単核球細胞(PBMC)の正常folliculin蛋白量をウエスタンブロット法(WB)により定量することで、診断できると考えた。市販のfolliculin蛋白量に対する抗体(N末端ペプチドやC末端ペプチドに対する抗体)、研究協力者より供与された抗体、などの複数の抗体を用いた。またPBMCをPHA、PWM、Ca ionophore等で刺激して蛋白量を増加させるなど、WBを行うための各種の条件設定を検討したが、健常人とBHD症候群患者を明確に区別可能な条件を見いだせなかった。詳細な検討はできていないが、a) 検討対象とした細胞の適切性、b)FLCN遺伝子の発現調節機構が未解明なため適切な実験条件を見いだせなかった、c)発現量を定量評価する際の対照遺伝子にGAPDHやactinを選択したが、適切なhouse-keeping geneを選ぶことができていなかった、などの要因が考えられた。
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日本臨床
巻: 73 ページ: 64-69
内科
巻: 115 ページ: 931