GαiとGαqサブユニットに共役するA3アデノシン受容体は悪性中皮種細胞のアポトーシスを誘導する。本研究は、悪性中皮腫の増殖制御に対するGタンパク質共役型受容体を介した新規細胞内情報伝達経路[Gタンパク質α subunit (Gα)の直接的結合によるnon-receptor tyrosine kinase Srcの活性化→Sch2/Grb2/SOS→Ras→Raf→MAPKKK→MAPKK→MAPK(ERK1/2)→細胞増殖、あるいはGαのRGS結合によるLARG(RhoGEF)活性化→RhoA→細胞増殖]を証明・確立し、悪性中皮腫の治療法戦略に応用することを目的として遂行された。 GαiとGαqサブユニットをクローニングし、それぞれのタンパク質にHisタグをつけたプラズミドを作製した。それぞれのプラスミドを悪性中皮種細胞に導入し、Hisタグで免疫沈降してGαiとGαqサブユニット結合タンパク質を検出した。MLDI-TOFMSでGαiとGαqサブユニット結合タンパク質を一つずつ解析したが、未だ有望な標的タンパク質は同定できていない。 悪性中皮腫細胞のアポトーシス誘導作用機序において、Gαシグナルに着目した研究は国内外を問わず、未踏の領域である。Gαの新規機能、すなわちSrc活性化とRhoGEF活性化に着目し、これを悪性中皮腫増殖と関連づけた点は斬新かつ独創的である。本研究成果は、画期的な新規悪性中皮種治療薬開発の基盤になるものと確信しており、現在も本研究は続行中である。
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