研究課題
腎臓は心拍出量のうち20%の血流量が供給される。一方で腎臓内での血流量の供給は非常に偏っており、皮質領域には総腎血流量の90%が供給されるのに対し、腎髄質領域には10%にも満たない血流量しか供給されない。その様な環境下であるにも関わらず、腎臓髄質外層領域では酸素を消費するナトリウム再吸収を盛んに行っていることから酸素濃度が低くなっており、虚血に弱く傷害されやすい構造となっている。また、腎臓髄質領域の血流量は生体内のナトリウムバランスを司る圧-ナトリウム利尿機構にも深く関わっている。しかしながら、臨床的に広く用いられている腎機能や腎障害の検査方法は主として腎臓皮質領域の評価には優れるが、腎臓髄質領域の機能を評価する方法については充分に開発されているとは言えない状況である。本研究は[15O]H2Oプローブを用いたポジトロン断層法(PET)を用いることによりヒトの腎臓髄質血流量を評価する方法を確立することを目的としている。研究の内容を説明した上で参加への同意が得られた腹膜透析療法施行中の末期腎不全患者を被験者として、非常に軽度の摂水制限条件下にて[15O]H2Oを静脈投与した後に腎臓を含むように腹部領域の一部をPETで撮影した。昨年度に健康な被験者を対象として撮影した[15O]H2O-PET画像との比較検討を行ったところ、健康な被験者と比較して末期腎不全患者の腎臓における[15O]H2O信号輝度が低値を示す傾向が得られた。[15O]H2O信号輝度は局所の血流量を反映すると考えられることから、本年度の検討で得られた結果は、末期腎不全患者においては腎血流量が低下していることを示唆しており、[15O]H2O-PET撮影は対象者の腎機能を画像的に評価しうることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
健康な被験者ならびに末期腎不全患者の[15O]H2O-PET画像を取得し、両者の間の違いを見出すことができた。研究は計画通りに進行している。
今後は 1)被験者のMRI撮影などを行うことにより腎臓髄質領域などの位置情報を特定することにより腎臓の部位別に局所血流を評価すること、2)実際に末期腎不全患者の中でも比較的軽度の患者を対象として、飲水負荷試験を伴う[15O]H2O-PET撮影を行い、健常者では飲水時に上昇した腎局所血流量の変化が腎不全患者において同様に観察できるかについて検討を行う予定である。
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