研究課題
最近、開発された質量顕微鏡は、位置情報を保持したまま質量分析を行う画期的な解析手法であり、解剖学的、生理機能的に複雑な腎臓は質量顕微鏡による解析の格好の標的と言える。本研究では、急性腎不全モデルに注目し、障害部位に限局した代謝変化を網羅的に解析した。虚血再灌流傷害を惹起後、6時間、24時間と対照腎において、特にホスファチジルコリン(PC)に注目して質量顕微鏡解析を施行した。その結果、腎障害6時間の早期よりダイナミックなPCの質的・量的変化を認めた。顕著に傷害をうける皮髄境界部を中心に変化するものとして、m/z値 758.6, 760.6, 784.6, 786.6の増加と806.6の減少を見出した。これらの病態生理的意義やバイオマーカーとしての有用性について、さらに検討を行っている。同じサンプルを用いて、トランスクリプトーム解析を施行した。Chka, Chkb, Pcyt1aなどの新規コリン合成系、Pemtなどのホスファチジルエタノールアミン(PE)-PC変換系の遺伝子群が増加し、Ptdss1などのPC分解系遺伝子群が減少することを見出した。さらに、マウス尿細管細胞株mProx24を低酸素条件で培養後、再酸素化して、虚血再灌流傷害を模倣する細胞系を構築した。この培養細胞系においても、腎虚血再灌流傷害と同様の遺伝子発現プロフィールの変化を確認した。今後、障害部位局所における遺伝子発現変化を同定し、リン脂質の質的・量的変化や腎障害に及ぼす影響を検討する予定である。
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http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20140919.pdf