研究課題/領域番号 |
25670409
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森 潔 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60343232)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 腎臓学 / アルブミン尿 / バイオマーカー / 再吸収 / リポカリン / 尿細管 / 再吸収 / 糖尿病性腎症 |
研究概要 |
腎障害によりアルブミン(Alb)などの高分子量蛋白の糸球体透過性が増大すると、近位尿細管での再吸収閾値を超えAlb尿あるいは蛋白尿を呈するが、近位尿細管より下流ネフロンでの蛋白再吸収経路の有無や局在は不明である。近位尿細管の蛋白再吸収を欠失した時の蛋白排泄量と各ネフロン部位の蛋白再吸収能を検討するため、近位尿細管特異的に発現するNDRG1遺伝子プロモーターを用いてmegalin(lox/lox);NDRG1-CreERT2マウスを開発し、低用量・高用量のタモキシフェン(Tam)を投与することにより、2種類のconditional KO(cKO)を作製した。再吸収部位の評価のため、糸球体濾過膜を自由に通過する低分子量蛋白を蛍光標識して静脈内投与し、腎切片を蛍光顕微鏡で観察した。蛋白排泄量評価のため、尿中Alb及びNgal濃度をELISA法で測定した。低用量cKOの腎では皮質近位尿細管のMeg蛋白発現は消失し、髄質近位尿細管の管腔側にモザイク状に残存した。高用量cKOでは、Meg蛋白発現はほぼ消失した。低用量cKOにおいて蛋白再吸収シグナルは主に髄質近位尿細管のMeg発現部位と一致して認められ、一部Meg陰性、AQP2陽性の集合管の管腔側にも認めた。両cKO共に、Tam投与後に尿中Alb排泄は10倍以上、Ngal排泄は500倍以上に増加した。結論:皮質近位尿細管での蛋白再吸収不全により、下流ネフロンでの再吸収が顕性化する。集合管での蛋白再吸収経路は上流ネフロンの障害を検知するメカニズムの一つとして働く可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tamの頻回投与により、薬剤誘導性に腎尿細管におけるmegalin発現をほぼ完全に欠失させることに成功し、蛋白の再吸収部位が近位尿細管からAQP2陽性集合管にシフトすることを明らかにすることができ、当初のH25年度の目標を達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
糖尿病・脂質負荷モデルの検討: C57BL/6Jマウスは遺伝子改変動物のgenetic backgroundのgold standardとして汎用されているが、この背景のマウスはアドリアマイシンや糖尿病などの負荷をかけても抵抗性を示し、比較的軽微な腎障害しか呈さない。一方申請者はSTZ誘発糖尿病マウスに60%高脂肪食(HFD、STZ投与2週後から6週間)を与えることでアルブミン尿、糸球体病変、尿細管への脂質沈着、マクロファージ浸潤、炎症マーカー遺伝子・線維化マーカー遺伝子の発現亢進が認められること、toll-like receptor 4 KOマウスでは腎病変が軽症化することを見出している。このSTZ+HFDのモデルマウスでは再現性の高い腎病変が認められること、腎尿細管への高度脂質沈着を認めることから、アルブミン再吸収のみならず、腎脂質沈着に対するmegalinの役割とmegalin発現欠失の効果を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2014年2月に購入予定であった実験動物の購入が、研究遂行の都合上5月に延期となったため。 2014年5月に市販の野生型マウス及び遺伝子改変マウスを購入し、物品費として計上する予定である。
|