研究課題/領域番号 |
25670413
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西中村 隆一 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (70291309)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 腎臓発生 / 尿管芽 |
研究概要 |
腎臓は後腎間葉と尿管芽の2つの組織から発生する。後腎間葉には、腎臓の最小機能単位ネフロンの前駆細胞が存在し、これが糸球体、尿細管など多系統に分化していく。我々は最近、マウス及びヒトの多能性幹細胞からネフロン前駆細胞を誘導し、糸球体と尿細管を含む3次元の腎臓組織の試験管内構築に成功した。しかし腎臓形成はネフロン前駆細胞単独で起こるわけではなく、尿管芽との相互作用が必須である。尿管芽がなければ本当に立体的かつ機能的な腎臓構造は形成されない。よって本計画は、ネフロン誘導能をもつ機能的尿管芽をマウス未分化細胞から試験管内で分化誘導することを目的とする。 平成25年度は、尿管芽が緑色蛍光蛋白(GFP)で蛍光発色するマウスを用いて、尿管芽細胞を1個から検出できる高感度の機能的コロニーアッセイを樹立した。またGFP陽性細胞を胎児の部位別にこのアッセイに投入することによって、このコロニーが尿管芽及びその起源である中腎管のどの部分から由来するかを解析した。現在このコロニー形成が生体内での尿管芽の分化をどれほど忠実に再現するかを、遺伝子発現解析で確認中である。これらの過程で、転写因子Sall4が尿管芽の有用なマーカーであることを見いだした。さらに、尿管芽の周囲に発現するIsl1遺伝子の遺伝子欠失マウスにおいてBmp4の発現が減少し、異所性の尿管芽形成や尿管・膀胱接続部の異常によって、腎臓形成不全や水腎症が認められることを発表した。これらの情報を統合して胎生初期の中胚葉さらにマウスES細胞からの尿管芽分化誘導法を開発したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿管芽細胞を1個から検出できる機能的コロニーアッセイの確立が、本計画の鍵であり、それを達成できた。しかしこれに時間を要したため、尿管芽誘導の試みが不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
コロニーアッセイを指標に、胎生初期の中胚葉さらにES細胞からの尿管芽分化誘導法を開発したい。そして間葉と組み合わせた器官培養法で3次元構造の再構築に迫る計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
検定系であるコロニーアッセイの確立に時間を要したため。尿管芽誘導の試みがまだ少ないのが現状である。 初期中間中胚葉から尿管芽への誘導を行う。これに成功した場合は、マウスES細胞からの誘導を行う。さらに初期中胚葉あるいはES細胞から誘導した尿管芽を、間葉との再構築系に投入して、尿管芽の分岐能及びネフロン誘導能を獲得しているかを検定する。これらによって腎臓の3次元構造の再構築にむけた基盤を確立する。
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