72D9抗イデオタイプ抗体取得に関しては、①免疫マウスの血液中から抗イデオタイプ抗体を同定することはできなかった。②細胞融合後の親抗体への陽性反応で抗イデオタイプ抗体の存在が明らかとなった。免疫寛容非誘導マウスと免疫寛容誘導マウスでの抗イデオタイプ抗体取得率に優劣は認められなかった。免疫寛容非誘導マウス:72D9抗体へのELISAプレート陽性率は、スクリーニングでは44/3936(1.1%)、クローニング施行時は12/4032(0.3%)であった。免疫寛容誘導マウス:72D9抗体へのELISAプレート陽性率は、スクリーニングでは15/2976(0.5%)、クローニング施行時は8/4032(0.2%)であった。③取得クローン中のアイソタイプ評価の結果、ほとんどがIgG3κ(77.8%)であり、IgG3λ(11.1%)とIgG2aκ(11.1%)がマイナータイプとして認められた。④Aβオリゴマーの抗原構造を内在すると考えられる抗イデオタイプ抗体自身には、H-SY5Y ヒト神経芽細胞腫細胞に添加しても毒性は認められなかった。⑤AβオリゴマーをSH-SY5Y ヒト神経芽細胞腫細胞に添加すると、その細胞毒性がLDH assayで確認された。この系に72D9抗体を添加しておくとその毒性は見事に中和された。さらに、取得した抗イデオタイプ抗体を添加すると、その抗毒性が中和され、Aβオリゴマーの毒性が復活した。抗イデオタイプ抗体自身には毒性がないことが確認できており、この毒性復活は親抗体―抗イデオタイプ抗体反応に依存していると考えられた。以上、今回の検討では、抗体療法で問題となる中和抗体生じても、自然免疫依存の生体内でワクチン的な効能を発揮する環境に至る可能性は極めて低いと考えられた。改めて、抗イデオタイプワクチンやそのCDR領域で設計されたDNAワクチン設計が必要と考えられた。
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