研究課題/領域番号 |
25670423
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40183305)
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研究分担者 |
河野 祐治 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20333479)
松下 拓也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (00533001)
松瀬 大 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70596395)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 細胞移植 / 多発性硬化症 / シュワン細胞 / 自己免疫性脳脊髄炎 |
研究概要 |
本研究は、進行型多発性硬化症に対しての新たな細胞移植治療の確立を目指したものである。 すでに申請者らが報告しているように、DAラット、Wistarラットから骨髄間葉系幹細胞(MSCs)を採取、培養し、beta-mercaptoethanol(BME)、レチノイン酸(RA)で処理した後、human basic fibroblast growth factor (FGF)、forskolin (FSK)、platelet-derived growth factor-AA (PDGF)、heregulin-beta1-EGF-domain (HRG)の栄養因子を加えることで、シュワン細胞を誘導する。シュワン細胞への誘導は、P0、Krox20、S-100、O4等の発現を、RT-PCRおよび免疫細胞化学で調べることによって確認した。 DAラットをMOGで免疫し、臨床病理学的に観察。4から12週の経過で慢性進行型EAEとなることを確認した。しかし症状の個体差が想定より大きいという問題があった。DAラットMSCs由来のシュワン細胞を、髄腔内に移植した。clinical scoreによる行動評価と組織評価を行った。しかし明らかな機能改善には至らなかった。 上記の理由として、EAEモデルは病変の範囲が広く、機能回復に至るまでの規模の移植が困難であった点が考えられた。したがって、上記の方法に代わって局所脱髄モデルを、エチジウムブロマイドを脊髄Th9レベルに局注することによって作成。脱髄の認められた局所に誘導シュワン細胞を移植した。現段階で、移植細胞が移植後も損傷部位にとどまり、軸索再生を亢進していると思われる所見が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞の培養、分化誘導、移植治療、行動評価、組織評価などは、計画通りに進んでいる。慢性脱髄モデルの作成や、移植細胞の標識の問題に関しては、当初の計画通りにはうまくいかず、再検討を要したが、全体的にはほぼ順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き移植実験を進め、行動、組織評価も併せて行っていく。また、当初移植細胞の標識として、GFPをレンチウィルスを用いた遺伝子導入を行うことによって行うことを想定していたが、発現が弱かったため、今後はGFPラットを用いた移植治療をすすめていく予定。 それから、あらかじめシュワン細胞誘導の段階毎にPSA-NCAMの発現を定量的PCR法等で調べておく。その上で、(1) レトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入法により、PSA-NCAMの発現を維持させた誘導シュワン細胞を作成する。さらに、(2) 澤田らのグループ(名古屋大環境医学研究所)より、脳標的化ペプチドを発現できる融合タンパク質ベクターの供与を受け、脳移行性ペプチドを誘導シュワン細胞に発現させ、脳移行型とすることを考えている。 移植研究に関して、動物モデルへの移植後評価期間は12週程度をとし、機能評価と組織学的評価を行う。機能評価は、Neurological severity score、Morris water maze testを用いる。これらにより、最も有効な移植細胞や移植経路について検討する。組織学的には、脱髄体積、残存軸索数、移植細胞の生存率、移植細胞の発現しているマーカー(myelin associated glycoprotein(MAG)、myelin basic protein(MBP)、glial fibrillary acidic protein(GFAP)、O4、P0等を想定)、移植細胞による軸索の末梢性髄鞘による再髄鞘化という点を主に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていくうえで、必要に応じて研究費を執行したため、見込み額と使用額に違いが生じた。 研究計画自体に大きな変更はないため、予定通りの計画を進めていく。
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