研究課題
挑戦的萌芽研究
成体においても組織幹細胞を起点とする新生・再生機構が存在するが、個体の高齢化の中で組織再生能力を維持するためには、細胞の老化と細胞外環境である細胞外マトリックスの老化の両者を制御する必要がある。しかし、老化によるマトリクソーム(マトリックス集合体)変性の分子基盤は不明の点が多い。本研究では、脳組織を例に挙げ、老化による(1)マトリックスの構造(2)マトリックス構成分子種(3)マトリックス構成分子の翻訳後修飾(4)マトリックスに結合するサイトカインの4つの変性過程を解析し、組織新生・再生の至適環境の探索を目的とする。これらの研究により、老化マトリックスの特性を解明し、ニッチ機能の低下とその分子機構が示されると期待する。25年度は、①マトリックスの微細構造の変化を観察と②構成マトリックス分子種の変化解析を進めた。若齢成体と高齢成体の脳室下帯につき、細胞外マトリックス分子(ラミニン、パールカン、コラーゲン、ナイドジェン等)免疫染色と透過型電顕(TEM)による形態の確認を行なっている。免疫染色ではタンパク質の変化は認められなかったが、糖鎖の発現に違いがあるため質量分析を開始した。3D解析のため、脳を透明化する手法(Clarity)により、脳全体の免疫染色を行い、解析ソフト(イマリス)で3次元構築し観察した。Fractoneの変化に加え、血管構造の変化を捉えいている。構成マトリックス分子種の変化として、ECM 分子PCR アレイ(Quiagen社)、とECM 分子プロテオミクス解析を行い検討した。タンパク質のiTRAQを用いた質量分析手法を用いたが、ECMタンパク質の検出が悪く、サンプル調整方法の条件設定を検討している。
3: やや遅れている
老化マウスを準備するのに時間がかかっている。タンパク質解析にてECMタンパク質の検出が悪く、条件設定を再検討している。
平成25年度に遅れた実験に加え、26年度は、実験計画の後半に挙げた③マトリックス構成分子の翻訳後修飾の老化過程での変化と④結合するサイトカインの変化を解析する。老化ECM では糖鎖発現量とパターンが変化しているのでこれを解析する。ヘパラン硫酸鎖10E4抗体(生化学工業)で認識される糖鎖がfractone と脳室下帯の血管基底膜での発現を老化脳で検証する。グリコサミノグリカンを免疫染色(ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸,ケラタン硫酸鎖)の局在パターンの分析を行なう。6 種類のレクチンを利用した免疫染色、二次元電気泳動で特異的糖残基を検出する。糖鎖の質量分析(LC-MS、LC-MS/MS)も行なう。AGEs(エイジズ)とは、Advanced Glycation End Productsの生体内局在を免疫染色にて、AGEsの蓄積量をウェスタンブロットで確認する。質量分析によりAGEsの種類を確認する。AGEs阻害物質を探索する。結合するサイトカインの変化は、1)候補サイトカイン切片上in situ 結合アッセイを行なう。2)候補サイトカインの下流シグナル分子が網羅的に解析できる様デザインしたカスタムPCR アレイ解析を行なう。3)老化マトリックスに親和性の高いあるいは低いサイトカインを確定し、脳室内に投与する。神経幹細胞の維持、増殖、分化への効果を定量的に解析する。の手順で進める。手法はこれまでに既に確立している。
高齢マウスの準備に時間がかかり、25年度の実験が一部26年度にずれ込んだため。25年度に高齢マウスの数が充分確保出来ず、遅れた分の実験のnを増やし、遅れを取り戻す予定である。
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