研究課題/領域番号 |
25670427
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
文村 優一 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (30647243)
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研究分担者 |
内原 俊記 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 副参事研究員 (10223570)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | αシヌクレイン / レヴィ小体 / レヴィ小体病 / 心臓交感神経 / 神経突起病理学 / MIBG心筋シンチグラフィー |
研究実績の概要 |
我々はこれまでの研究で,αシヌクレインが神経軸索の遠位から起始し,より近位に進展しつつ,最終的な細胞脱落に至るという病変形成過程を明らかにした.この変化は心臓交感神経で早期から顕著で,臨床的にMIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下として捉えれば診断的価値が高く有用である.臨床現場でのMIBG心筋シンチグラフィーの普及につれ,今年度の本研究においても生前に撮像された剖検例が蓄積されてきた.我々は既にヒト剖検例において心筋の凍結浮遊切片を用い,これまでパラフィン包埋薄切切片では観察できなかった心筋内自律神経線維の可視化に成功した.現在この蓄積例について,臨床経過や神経学的所見,神経放射線学的検査結果等の臨床情報の解析を行いつつ,軸索最末端に最早期病変が存在することを念頭に広い範囲の軸索病変を追跡している.中枢神経系とは異なり,心筋内自律神経線維は orientation が明瞭である.そこに焦点をあてる本研究を通じ,早期病変の進行を病変の広がりとして把握すれば,病態を反映した適正な特異的早期診断と,将来のより早期からの疾病修飾薬による治療開始への基盤となる知見を得ることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生前の臨床経過と,心臓交感神経および脳病理のいずれも解析可能な剖検例を,現在まで20例を蓄積することができた.各例について心筋のより厚い凍結浮遊切片を作成し免疫染色したうえ,バーチャルスライドシステムを使用して広範囲を定量的に解析する手法を確立することができた.MIBG心筋シンチグラフィーの結果と心臓交感神経脱落の程度が相関することを世界に先駆けて示し,本年度の日本神経学会学術総会での最優秀ポスター賞として表彰され,Jornal of Neurology, Neurosurgery, Psychiatry誌上にアクセプトされた.さらに同一部位を光顕像および電顕像とで解析することが可能となる新たな免疫電顕の手法を開発し,Acta Neuropathologica Communicationsに発表した. これらの成果を基盤として現在,厚みのある三次元構造と軸索最遠位部であるシナプス付近までの超微形態の解析について解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
軸索最遠位部を広い範囲で検索し,シナプス付近までの変化を蛍光標識にQdotを用いて追跡したうえ,軸索遠位部を免疫電顕に持ち込む手法(3D oriented immuno EM)を進め,心臓交感神経のαシヌクレイン沈着の早期像の三次元構造と,その超微形態像の解析を進めたい.また最終年度の成果をまとめ発表することにも有効に研究費を使用したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
解析剖検例が増加し,また蛍光標識にQdotを用いて追跡した軸先遠位部分を免疫電顕に持ち込む手法(3D-oriented immuno EM)についても物品費や人件費が次年度により多く見込まれた.円滑に研究を進める必要から,次年度使用額として持ち越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
増加した解析症例について,予定通り蛍光標識にQdotを用いて軸先遠位部分を免疫電顕に持ち込む手法(3D-oriented immuno EM)を進めるにあたっては,当初の交付予定額に加えて,次年度使用額とを合わせた助成額が欠かせない.その合計額を物品費や人件費に使用したい.
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備考 |
軸索末端にはじまるレヴィー小体の最早期病変Pale neuritesをとらえパーキンソン病やレヴィー小体型認知症の早期診断へ応用する.
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