研究課題
我々はこれまでの研究で、αシヌクレインが神経軸索の遠位から起始し、近位へ向かって進展しつつ、最終的な細胞脱落に至るという病変形成過程を明らかにしてきた。この変化は特に心臓交感神経において早期から顕著で、臨床的にMIBG心筋シンチグラフィーの取り込み低下として捉えれば診断的価値が高く有用で、パーキンソン病やレヴィー小体型認知症の国際臨床診断基準に採用されている。臨床現場でのMIBG心筋シンチグラフィーの普及につれ、生前にMIBG心筋シンチグラフィーが撮像された剖検例が蓄積されてきた。これらの剖検例で、もし軸索最遠位の病変をとらえられれば、それこそがαシヌクレイン沈着の最早期病変と想定される。本研究ではこれまでに以下の実績を得た。実績1:心筋内交感神経軸索最末端の検索:心筋内αシヌクレインや neurofilamentの局在を高感度に網羅するために、厚切りパラフィン切片全体を virtual slideでとりこみ検討した。 Neurofilament陽性の軸索を一部追跡できたが、αシヌクレイン陽性構造は乏しい。実績2:高齢カニクイザル心臓の軸索病変の検討:ヒト心臓交感神経軸索がαシヌクレイン沈着の好発部位であるとすれば、高齢サルの心臓でも同様の変化が期待される。そこで死亡時30歳代までのカニクイザルの心臓を入手し、αシヌクレイン、neurofilament免疫染色、より感度の高いCampbell-Switzer染色で封入体の有無を検索した。αシヌクレイン陽性構造を認めない例でも一部にCampbell-Switzer陽性像を認めた。実績3:進行性核上性麻痺例で、心筋のMIBGとりこみが低下した4例で、心臓交感神経は保たれ、Lewy病理が見当たらない4例を見いだした。軸索最末端の軸索病変か、機能的変化により MIBG取り込み低下が起こりえる場合があることを初めて明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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