ハンチンチン(Htt)遺伝子のノックアウトマウスは8.5日胚までに胚性致死となるが、そのHtt遺伝子の胚発生過程における役割や細胞内での機能については全くわかっていない。本研究は、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞など)とRNAiノックダウン法を組合せた新しいアプローチによって、今までわからなかったHtt遺伝子の胚発生過程の役割や細胞内機能の解明につながる新規データの取得を目標とした。Htt遺伝子をRNAiノックダウンするためのsiRNA・shRNAの設計と評価を完了し、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたshRNA発現AAVの構築も完了した。そのshRNA発現AAVを用いてマウスES細胞に感染させ、内在性Htt遺伝子のRNAiノックダウンを試みた。しかしながら、いろいろな条件を試してみたが、構築したshRNA発現AAVのES細胞への導入効率が極めて低いという結果に終わった。そこで従来法による発現抑制も試みた。合成siRNAをリポフェクションによって導入してみたが、強力な遺伝子ノックダウンの結果を得ることができなかった。当初の研究計画・予想よりも極めて困難な実験であることが分かった。しかし、本研究推進中に、ゲノム編集技術の目覚ましい発展にともない新たな打開策の可能性も見えてきた。今後はCRISPR/ Cas9システムを新規に採用した戦略で目的達成を目指していきたいと考えている。
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