研究概要 |
GLP-1受容体シグナル伝達系経路を解明すべき研究をマウスを用いて実施した。 DNAチップによる初期研究データを基にしてGLP-1受容体刺激薬であるLitaglutideを雄性C57BL6Jマウスに腹腔内投与し、1時間後に視床下部を摘出し、遺伝子発現をqRT-PCRで定量解析した。DNAチップで2倍以上の変化が認められていたKcnk16はqRT-PCRでは遺伝子発現は認められなかった。また、SH3/ankyrin domain gene 1についても遺伝子発現の変化は認められなかった。レプチンやセロトニンーメラノコルチン系の食欲抑制に関わる代表的な神経ペプチド(POMC, CART, AgRP, BNDF)もLiraglutide投与による遺伝子発現の変化は認められなかった。更に、Agouti peptideが脳内異所性に過剰発現してメラノコルチン系の伝達障害を起こし肥満、糖尿病を呈するマウス(KKAy)にLiraglutideを投与すると、摂食抑制、体重減少、血糖抑制等の効果を呈した。これらのことより、GLP-1受容体刺激は脳内メラノコルチン系を介さない刺激伝達経路で食欲抑制と糖代謝改善効果を発揮することが示唆される。 KKAyマウスにLiraglutideを腹腔内投与し、24時間後に血中インスリンやグルカゴン濃度は不変でありながら高血糖改善効果を呈した。その際に血中FGF21濃度が増加していることが判明した。そこで、更に、肝臓における糖代謝制御に関わるGLP-1反応性遺伝子の解析をqRT-PCRで実施した。肝臓ではG6pase、FoxO1, Notch, Glucokinase, BAD, PPARalpha等の遺伝子発現は不変であったが、PPARgammaとFGF21の遺伝子発現が有意に増加していた。肝臓にはGLP-1受容体の発現はほとんどないため、GLP-1の刺激伝達系が神経系を介して肝臓でFGF21産生を促し、糖・エネルギー代謝に影響を及ぼすことが示唆される。
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