研究実績の概要 |
食欲と代謝調節に関わるGLP-1反応性遺伝子を脳と肝臓で探索した。GLP-1受容体刺激薬であるLiraglutideを肥満2型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスに腹腔内投与すると、摂食量と体重の減少、高血糖の低下、肝臓でのFibroblast growth factor 21(FGF21)の遺伝子発現量と血中FGF21濃度の増加を生じた。一方、内因性にGLP-1濃度を高めるDPP-4阻害薬、Alogliptinを混餌で4日間投与して血中GLP-1濃度を高めても、摂食量、体重、血糖値、血中FGF21濃度の変化は生じなかった。これらの所見より、GLP-1受容体刺激薬はGLP-1濃度とは無関係に過食・肥満・糖尿病を改善する作用を有する事が示唆された。このLiraglutideによる血中FGF21濃度の増加作用はC57BL6Jマウスでも同様に認められた。そこで、C57BL6Jマウスの第三脳室内にLiraglutideを注入すると用量依存性に摂食量と体重の減少が認められ、肝臓からのFGF21分泌増加が認められた。これからの所見からGLP-1受容体刺激薬は中枢神経系のGLP-1受容体に作用して食欲抑制と肝臓からFGF21産生を促すことが示唆された。そこで視床下部でGLP-1受容体刺激で反応する遺伝子を探索した結果、食欲調節で従来知られている主要なぺプチド(POMC, CART, AgRP)はGLP-1受容体刺激では変化しておらず、未知の遺伝子群の有意な変化が見つかった。これらの遺伝子の機能を同定するために、これらの遺伝子のsiRNAをマウスの第三脳室に注入し、摂食量と体重の変化を観察する実験を企てた。その結果、Spink8とAdora2aのノックダウンでは、摂食量の増加所見を得られた。これらのGLP-1反応性遺伝子は新たな食欲調節関連遺伝子となる可能性が示唆された。
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