研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は,β細胞や脂肪細胞に発現する甘味受容体の内因性リガンドを探索同定することを目指し,それを通じて,この状態が糖代謝・エネルギー代謝における意義を明らかにすることを目的としている。研究計画を立案した当初は,糖代謝の中間産物を含む各種の代謝産物やアミノ酸を念頭において研究を準備し進めてきた。実際そのような検討によりいくつかの代謝産物に活性があることが判明した。しかし,実験を進める中で,生理的に最も重要な糖であるグルコースがこの受容体を活性化させること,さらにこれまで考えられてきたより遥かに低濃度でグルコースが甘味受容体を活性化させていることが明らかになった。つまりこの受容体のもっとも重要なリガンドはグルコースなのであった。膵β細胞ににおいては、非代謝性のグルコースアナログである3-O-メチルグルコース(3OMG)が甘味受容体を活性化し,細胞内でのグルコース代謝を促進することも明らかになったのである。つまり,インスリン分泌におけるもっとも重要な刺激物質であるグルコースは,細胞表面の甘味受容体を活性化して自身の代謝速度を加速させ,同時に細胞内へ取り込まれて基質を提供し、ATP産生を増加させているのである。本研究によりインスリン分泌調節におけるグルコース作用の新しい側面が明らかになった。またβ細胞だけでなく,脂肪細胞や小腸の内分泌細胞においても甘味受容体が「グルコース感知受容体」として機能していることも明らかになりつつある。今後はグルコース感知受容体である甘味受容体の機能と意義についてさらに研究を進めていきたい。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の当初の目的は,β細胞や脂肪細胞などの体内の臓器に発現する「甘味受容体の内因性リガンド」を探し出すことであった。この一年間の研究を通じて,生理学的に最も重要な糖であるグルコースがこの受容体のアゴニストとして機能することが明らかになった。さらにβ細胞においては,この受容体の刺激によりグルコース代謝が加速することも明らかになった。この結果は,従来のグルコースの作用機構に関する知見を一新するものであり、甘味受容体が問う代謝調節においてきわめて重要な役割を果たしていることが判明した。これらの結果から,本研究計画の遂行は,当初の予定以上に進展しているということができる。
甘味受容体が「グルコース感知受容体」として機能していることが明らかになったので,今後はβ細胞、脂肪細胞、小腸内分泌細胞などにおいて,このグルコース感知受容体が果たしている役割を明らかにするとともに,糖尿病・肥満などの病態においてこの受容体がどのように変化しているか,その変化が病態の中でどのような意義をもつか,さらにはこのグルコース感知受容体を利用して新たな治療戦略が構築出来ないかなどを検討して行く予定である。
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