研究課題
本研究は、膵β細胞や脂肪細胞に発現する甘味受容体(分子実体は甘味受容体サブユニットT1R3のホモダイマーと考えられる)を活性化する内因性のリガンドを同定し、その生理学的・病態生理学的意義を明らかにすることを目的としている。研究開始時には、体内や細胞内に存在する糖代謝産物が内因性リガンドではないかと考え、その同定を進めたが、その中で、生理的に最も重要な糖であるブドウ糖(グルコース)がβ細胞の甘味受容体を活性化することを見いだした。体内に内因性リガンドは複数存在すると考えられるが、グルコースがその一つであることが判明したことから、この受容体をグルコース感知受容体と命名した。以後の研究は、グルコースによるこの受容体の活性化機構、細胞内シグナル、活性化の生理学的意義の解明に焦点を絞り様々な検討を行って来た。まずβ細胞のグルコース感知受容体が、グルコースにより惹起されるインスリン分泌に関与するかを検討したところ、この受容体の抑制によりインスリン分泌が30~50%減少することが判明し、実際にインスリン分泌調節に関与していることが明らかになった。その分泌制御機構について検討を行ったところ、この受容体が細胞内のグルコース代謝を促進し、ATP 産生を増加させることが明らかになった。またメタボローム解析などの結果、この受容体の活性化によりグリセロールやアラニンなどから基質が動員されるとともにNADHシャトルが活性化されるのではないかということが考えられた。つまり、生理的に最も重要なインスリン分泌促進因子であるグルコースは、細胞表面のグルコース感知受容体に作用して代謝を活性化させるとともに、細胞内に取り込まれてあらかじめ活性化された代謝経路により代謝を受けてATPが産生され、ATP依存性Kチャネルを抑制して作用を発揮するという新しい分泌調節機構を確立することができた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (2件)
J Diab Invest
巻: 6 ページ: in press
10.1111/jdi.12304
Endocrinology and Metabolism
巻: 29 ページ: 12-19
10.3803/EnM.2014.29.1.12
Endocrine J
巻: 61 ページ: 797-805
org/10.1507/endocrj.EJ14-0221
Mol. Cell. Endocrinol
巻: 394 ページ: 70-79
10.1016/j.mce.2014.07.004
巻: 61 ページ: 119-131
org/10.1507/endocrj.EJ13-0431