研究概要 |
糖尿病治療において、膵β細胞の保護、再生、新生などは理想的な治療法である。iPS細胞は4種類の遺伝子を導入することによって多分化能を獲得するので、夢の治療法の重要シーズとして期待される。申請者が以前に作成した膵島遺伝子の発現プロフィールと遺伝子クローニングの成果によると、興味深いことに、4種類のiPS遺伝子は全て膵島細胞で発現している。しかし、膵島細胞は通常は多分化能を発揮せず、終末分化を維持しているが、その制御機構に関しては明らかでない。 膵島細胞は妊娠、インスリン抵抗性、膵切除などの要因によっては、膵島の過形成や導管や外分泌細胞からの新生が起こることが知られる。そこで申請者は、高度分化の状態でも誘導因子が働けば細胞変換能が惹起される、という仮説を立て、検証するための第一歩として、膵外分泌細胞から内分泌細胞への変換シグナル因子の同定を試みる。 ラット41,000 EST(正常膵島21,000個、RINm5F細胞20,000個)のソースから重複しないESTクローンを選別した。これら膵島ESTクローンの標識cRNAプローブを作成し、独自に開発した大規模in situ hybridization (ISH)を行うシステムを用いてスクリーニングを実施した。ESTクローンとラット膵切片を用いて検討し、膵島に特異的に発現する111遺伝子をプールした。次いで、胎生15日の膵組織を用いて大規模ISHを行う系の条件を設定することができ、100ngが最適プローブであることを確認した。現時点で、胎生期スクリーニングはほぼ完了し、発現パターンのin silico解析を行っているところである。終了次第、発現ベクターへの組み込みに着手する。
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