研究実績の概要 |
膵島は高度に分化した組織であるが、自身も複製することが示されている。さらに、以前から膵外分泌細胞や導管から膵島新生が生じることも知られる。すなわち、種々の要因によって膵島の過形成や新生が起こるので、膵島に加えて外分泌細胞も内分泌能を潜在的に有することになる。 外分泌腫瘍由来のAR42J細胞をアクチビン/ベータセルリンで内分泌細胞に分化誘導したところ、膵島に特徴的なngn3, PAX4と共に、MODY転写因子であるHNF-4α, -1β,IPF1, Beta2/NeuroDが一緒に、あるいは続いて発現誘導された。HNF-1αについては、関連性のある誘導は見られなかった。従って、これら選出されたMODY分子を中心にしてネットワーク解析を試みることが効率的である。 解析シーズを得るために、ラット膵島ESTをプローブとして大規模ISHを実施した。その結果、発現が膵島特異的である111遺伝子が得られ、これらをMODY分子ネットワーク解析に投入した。胎生15日の胎児膵のISHスクリーニング結果も採用した。更に、インスリン分泌能を欠失した胎生期の性格を有するRINm5Fと正常膵島の発現プロフィールを比較して14遺伝子を獲得し、同じくMODY分子ネットワーク解析に投入した。共発現、機能構造、分子連関、機能経路などに関する種々のアルゴリズムを駆使した結果、最終的に、11遺伝子(PKD2, TMEM130, SPTAM1, MYCT1, BEX2, GNAZ, ADM2, WIF1, GNB3, FAML149A, HMP19)が有力な近隣分子として獲得された。これらの分子は、内分泌能の獲得に際して誘導される分子群であるが、逆に、これらの発現増強による内分泌能への変換も求められるが、それは今後の研究課題である。
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