研究課題/領域番号 |
25670433
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森下 竜一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (40291439)
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研究分担者 |
中神 啓徳 大阪大学, その他の研究科, 寄附講座教授 (20325369)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 脂質異常症 / ワクチン |
研究概要 |
1.糖尿病(標的分子DPP-4)ワクチン DPP4の構造から候補抗原(10アミノ酸程度)を3つ絞り、それぞれKLHとconjugateさせたペプチドワクチンを作成した。このワクチンを2週間毎にマウスに投与した結果から、抗体価の上昇が認められた抗原2つを候補とした。さらに、免疫後のマウス血清を用いてDPP4活性阻害作用を検討した結果から、候補抗原配列を1つに絞って薬効試験を行った。高脂肪食付加モデルマウスにおいて、DPP4ワクチン投与群では食事負荷後の血糖が有意に低下しGLP-1も増加していた。すなわち、DPP4ワクチンによって産生された抗DPP4抗体により、DPP4活性が低下しGLP-1増加によって血糖が低下したことが示唆された。 2.脂質異常症(標的分子Lp(a))に対するワクチン Lp(a)の繰り返し配列の中から抗原を選定し、B型肝炎コア蛋白のプラスミドDNAの中にその部分配列を組み込んでHBc-Lp(a)ワクチンを構築した。DNAワクチンとして良く用いられるエレクトロポレーション法で、2週間毎に合計3回、大腿筋に投与(120ug/60ul)を行い、抗体価測定を行ったところ、有意な抗体価の上昇を認めた。この抗体を精製し、培養細胞へのLp(a)投与と同時添加した結果、Lp(a)によるサイトカインの上昇が有意に抑制された。すなわち、ワクチンによって産生された抗Lp(a)抗体がLp(a)の作用を中和できたことが分かった。また、Lp(a)過剰発現マウスを用いた頸動脈結紮による血管内膜肥厚モデルにおいて、Lp(a)ワクチン投与群では血管リモデリングを有意に抑制し、免疫染色ではLp(a)の沈着の抑制が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
DPP4ワクチンに関しては、抗原部位の決定、それを用いたペプチドワクチンのマウスでの有用性が明らかとなり論文報告を行うことができた。Lp(a)ワクチンに関しては、同じく抗原部位の決定とそれを用いたDNAワクチンを構築することができ、マウスでの抗体価の上昇とLp(a)過剰発現マウスを用いた血管内膜肥厚の抑制効果を示すことができ、論文報告を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ワクチンの安全性担保のために、主としてT細胞の活性化の評価として、エリスポットアッセイ・T cell proliferationアッセイを行う。アルツハイマー病に対するアミロイドベータワクチン治療において、T細胞の活性化による細胞性免疫が活性化されて脳炎という重篤な有害事象が発生したことを鑑みて、本研究ではT細胞の活性化を可能な限り回避したDNAワクチンシステムを構築している。DNAワクチン後のマウス脾臓由来細胞にDPP-4あるいはLp(a)、陽性コントロールとしてHBcを添加して、インターフェロンγやインターロイキン4の定量、あるいは細胞増殖能(Thymidineの取り込み)を評価する。 さらに抗体価測定のときのIgGサブタイプ(IgG1, IgG2a, IgG2b)やエリスポットアッセイのときのサイトカイン分泌のパターンからT細胞のTh1(IgG2a, IgG2b、インターフェロンγの上昇)およびTh2(IgG1、インターロイキン4の上昇)バランスの検討を行う。
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