研究実績の概要 |
糖尿病(標的分子DPP-4)ワクチン DPP-4(CD26)は1回膜貫通型の蛋白であり、膜貫通部位付近で切断されて血中へと放出され、2量体を形成することでインクレチン(GLPなど)を不活性化する酵素活性を有する。近年、糖尿病治療薬としてCDD-4阻害薬が臨床で用いられているが、インクレチンは血糖値が高い場合にはインスリン分泌を促進するため、持続的にDPP-4を阻害しても低血糖は生じにくいと考えられる。そこでDPP-4を標的とした糖尿病ワクチンを設計することとした。DPP-4の配列の中から立体構造を考慮して抗原を3箇所選定しペプチド合成を行い、キュアリア蛋白であるKLHとのコンジュゲートワクチンを合成した(それぞれE1, E2, E3)。このワクチンを野性型マウスに2週間毎に3回投与して抗体価の上昇を評価した。結果として、E1とE3ワクチンでは抗体価が上昇したがE2は無効であった。 次にE1とE3ワクチン投与後のマウス血清を用いてDPP-4活性を測定したところ、E3ワクチン投与後のマウス血清ではDPP-4活性阻害が認められたのに対してE1ワクチン投与後のマウスではDPP-4活性が認められなかったそこで、E3を有力な候補配列として次に薬効試験を遂行した。野生型マウスにE3ワクチン(低用量・高用量)を投与し高脂肪食を負荷したところ、高用量ワクチン投与群において糖負荷試験における血糖の有意な低下とインスリン負荷試験におけるインスリン抵抗性の改善が認められた。他の糖尿病マウスを用いた検討においても、高用量E3ワクチン投与により耐糖能の改善が認められたことから、DPP4ワクチンが糖尿病マウスモデルに対して有効であることが示唆された。
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