• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

肥満・NASHをターゲットにした癌抑制遺伝子p53の役割と新たな創薬標的探索

研究課題

研究課題/領域番号 25670438
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関千葉大学

研究代表者

田中 知明  千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50447299)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードがん抑制遺伝子 / NASH / 生活習慣病 / ROS / エネルギー代謝 / メタボローム
研究概要

ゲノムの守護神p53は、癌抑制機能だけでなく、肥満、糖尿病、NASHなどの生活習慣病や老化関連疾患にも重要な役割りを果たすが、生活習慣病病態におけるメカニズム解析が立ち遅れている。今回、エピゲノム・トランスクリプトーム解析とメタボロミクスを融合させて、p53の新たなエネルギー代謝制御機構と病態との関わりにアプローチした。NASH-HCC発症のマウスモデルを樹立し、グルタミンとROSの制御システムが大きく変動していることを見出した。さらに、メタボローム解析を行い、解糖系中心代謝酵素とグルタミン代謝調節機構の変化に伴うメタボライトの変化が観察され、病態に応じたエネルギー代謝とROS制御の役割が示唆された。更に、組織での遺伝子発現解析からp53の多彩な生理機能が、NASHからHCC発症の病期に応じて、大きく異なっていることが明らかとなった。現在、p53 conditional KOマウスを作成し、Alb-Cre・AP2-Cre・Insulin-Creと掛け合わせ、生活習慣病における臓器特異的p53の役割をin vivoで検証するモデルを樹立しつつある。また、p53やその下流遺伝子として、NASH-HCCの病態で重要な役割を担うと推定される遺伝子群について、尾静脈からのアデノウイルスのshRNAデリバリー(過剰発現)を用いて、p53とその下流の代謝調節分子群のin vivoでの役割を明らかにしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定であるNASH-HCC発症の動物モデルを樹立した。加えて、それらの組織を用いて遺伝子発現解析とメタボローム解析を行い、p53下流遺伝子といくつかの代謝調節pathwayが重要な役割を果たす事を見出した。更に、in vivoでの肝臓特異的遺伝子発現制御システムを樹立し、また、p53-conditional KOマウスの作成に成功した。これらは、当初の予定を概ね順調に進展させ、conditional KOマウスについては予想以上の成果を見出している。

今後の研究の推進方策

(1)CE-TOFMSによるメタボローム解析を用いた転写因子p53とその下流の代謝酵素分子群による細胞内メタボライトのダイナミクス解析。
癌細胞では解糖系が亢進し、TCAサイクルの抑制と嫌気的経路からエネルギーを利用する変化が生じており、ワールブルグ効果と呼ばれている。p53がこれらの酵素反応系を調節することが明らかにされつつある。これまで同定されてきた機能的代謝制御分子候補に対して、細胞内代謝作用機序・エネルギーバランスに及ぼす影響についてメタボローム解析を用いて動的に捉える。具体的には、前述したsh-RNAノックダウンシステムで、候補遺伝子をサイレンシングし、代謝作用機序・エネルギー調節作用起点を細胞種類ごとに比較検討する。
(2)マウス肥満モデル/NASHモデルにp53 conditional KOマウスを組み合わせたを用いたin vivoでの有用性/実証的解析。
これまで同定された遺伝子や分子の機能解析を引き続き行うが、実際に同定された分子は、基本的に細胞レベルでの代謝調節因子として機能する可能性が考えられる。高脂肪食負荷による肥満マウスモデルとNASHモデルマウスを用いて、脂肪組織・肝臓・血管内皮において、それらの代謝調節関連遺伝子が、実際の病態モデルの個体レベルで変化しているかの発現解析を行なう。また、我々は、p53更に、組織メタボローム解析を行い、細胞レベルと組織レベルでの代謝動態を比較することで、組織特異的代謝変化と代謝・エネルギーバランス調節分子の関連づけを行い、ターゲット遺伝子の有用性を検証する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Gata3/Ruvbl2 complex regulates T helper 2 cell proliferation via repression of Cdkn2c expression.2013

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa, H., Tanaka, T., Kato M., Tohyama H., Hanazawa A., Tamaki Y., Hirahara K., Sakikawa I., Morita A., Nagira M., Suzuki, Y. and Nakayama, T
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci U S A

      巻: 110(46) ページ: 18626-18631

    • DOI

      10.1073/pnas.1311100110

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functionally distinct Gata3/Chd4 complexes coordinately establish T helper 2 (Th2) cell identity.2013

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa, H., Tanaka, T., Suzuki, Y., Iwamura, C., Ohkubo, S., Endoh, K., Kato, M., Endo, Y., Onodera, A., Tumes, DJ., Kanai, A., Sugano, S., Nakayama, T
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci U S A

      巻: 110(12) ページ: 4691-4696

    • DOI

      10.1073/pnas.1220865110

    • 査読あり
  • [学会発表] RNA-seqによるp53依存的代謝調整分子の探索的解析と鉄代謝調整分子FDXRのNASH/NAFLDにおける役割2013

    • 著者名/発表者名
      佐久間一基、永野秀和、鈴木佐和子、中山哲俊、橋本直子、滝口朋子、樋口誠一郎、鈴木穣、菅野純夫、田中知明、横手幸太郎
    • 学会等名
      第86回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130425-20130427
  • [学会発表] 癌抑制遺伝子p53によるグルタミン代謝調節作用の新局面と癌・生活習慣病における役割2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木佐和子、田中知明、横手幸太郎
    • 学会等名
      第86回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130425-20130427
    • 招待講演
  • [学会発表] p53下流遺伝子DPYSL4の癌抑制機能と癌における細胞内代謝調整作用2013

    • 著者名/発表者名
      永野秀和、鈴木佐和子、中山哲俊、鈴木穣、菅野純夫、北川光洋、曽我朋義、横手幸太郎、田中知明
    • 学会等名
      第86回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130425-20130427
  • [学会発表] 核内構造体構成因子SP110によるp53依存的細胞老化制御機構と癌・生活習慣病への関わり2013

    • 著者名/発表者名
      橋本直子、田中知明、横手幸太郎
    • 学会等名
      第86回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130425-20130427
  • [学会発表] ES/iPS細胞における転写因子解析とp53によるグルタミン代謝調節とROS制御機構2013

    • 著者名/発表者名
      田中知明
    • 学会等名
      第86回日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      20130425-20130427
  • [図書] BIO Clinica2013

    • 著者名/発表者名
      田中知明、横手幸太郎
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      エピジェネティクスと老化

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi