研究課題
挑戦的萌芽研究
同種造血幹細胞移植を受けた小児や若年患者の長期生存例で不妊が切実な問題となっている。移植前処置による卵巣・精巣毒性が原因であることはよく知られているが、申請者は同種移植後に不妊率が高いことから、GVHDと不妊の関連に注目し、マウス骨髄移植モデルを用いて研究を行った。B6 → B6D2F1(♀)の同種骨髄移植を行い、コントロールの非GVHD群はB6D2F1 → B6D2F1(♀)の同系骨髄移植とした。移植後、経時的にGVHD重症度をスコアでモニターし、卵巣を採取、病理学的な評価を行った。同種移植群では、卵巣にドナーT細胞の浸潤がみられ、卵巣細胞、とくに顆粒膜細胞にアポトーシスがみられ、両者のsatellitosis もみられ、卵巣GVHDの発症が確認できた。次に顆粒膜細胞が産生し、卵胞の維持に重要な抗ミューラー管ホルモンを血清中で測定したところGVHD群で低下が認められた。そこでホルモン投与による過排卵実験を行ったところ、GVHD群で排卵数の低下が認められた。さらに、移植後に健常オスマウスと交配したところ、GVHD群で出産能の低下がみられた。以上の結果は、卵巣がアロ応答性T細胞の標的臓器であり、卵巣GVHDが発症による卵巣ダメージは機能不全を惹起することが強く示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
本課題の仮説である卵巣がGVHDの新たな標的臓器であることがほぼ確実となった。卵巣GVHDの存在を、病理学的、内分泌学的に証明でき、さらに不妊となることを証明できた。ほぼ完成に近づいており、初年度に想定以上の達成が得られた。
初年度に得られたデータをリピートし、統計学的有意差を検討し、データの確実性を検証する。また、FSHなど下垂体由来の卵巣刺激ホルモンに変化がみられないか検討する。最終的には、免疫抑制剤によるGVHD予防の実施によって卵巣機能と妊孕性の保護が可能であることを証明し、GVHDが不妊の原因であり、GVHD制御による不妊防止を確立する。
動物実験施設の改修に伴い、十分な研究スペースが確保できなかった。今年度は十分な実験スペースを確保することと、その他の実験スペースを有効利用することで対応する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (1件)
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