研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、造血幹細胞におけるRasシグナルの変動が幹細胞クローンの優勢・劣勢を決定する鍵になるのではないかという仮説に基づき、幹細胞クローン増幅のメカニズムの解明を目標として研究を進めた。Rasシグナル活性化による細胞競合の意義について検討するため、Creリコンビナーゼにより活性化型に変換するKra-sG12DマウスとRosa-CreERT2マウスを交配し、そのマウスの骨髄細胞を正常骨髄細胞と共に移植した。移植後にタモキシフェンを投与し、野生型造血幹細胞とK-ras活性化型造血幹細胞の競合状態の観察を試みた。K-ras活性化造血細胞は、骨髄球系細胞の優位なキメリズムを示し、明らかな骨髄増殖性腫瘍(MPN)の状態が生じていた。さらに、このマウスでは、その後、高頻度に、Tリンパ球白血病の発症が認められたため、造血幹細胞のクローン解析や競合を評価するのは困難な状況であると考えられた。一方、Spred1欠損マウスでは長期的な観察でも、異常な白血球細胞の増多等、明らかなMPN状態は認められなかったため、造血幹細胞の評価に適しているのではないかと考えられた。Spred1欠損骨髄細胞と野生型骨髄細胞を移植し、競合実験を行ったところ、Spred1欠損によるキメリズムの優位性が確認された。さらに、これらの変異細胞を移植されたマウスでは白血病の発症は認められなかった。また、骨髄中の造血幹細胞の数に大きな変化は認められなかった。以上の結果より、Spred1欠損マウスを用いることによって、造血幹細胞の競合の制御メカニズムの解明に非常に有用な系であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
おおむね計画通り研究を実施しており、想定された結果が得られているため。
来年度は、Spred1欠損による造血幹細胞クローン増幅の分子メカニズムを特定することを目標として計画を進める予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 111 ページ: 3805-10
10.1073/pnas.1320265111.