研究課題/領域番号 |
25670448
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 再生不良性貧血 / NFAT / Nr4a / シクロスポリン / エクソームシーケンシング |
研究概要 |
シクロスポリン(CsA)の単独療法を行った輸血歴のない巨核球減少性血小板減少症2例と非重症再生不良性貧血患者4例を対象として、治療前の骨髄単核細胞と治療後の骨髄単核細胞における遺伝子発現をマイクロアレイ法を用いて比較した。治療前の骨髄では、炎症性サイトカインに関連した複数の遺伝子が高発現していた。そのうち、特に発現が高い遺伝子の中から、NFATのシグナルパスウェイに関連する遺伝子に注目したところ、CsAに対する反応性が3か月以内にみられた2例では、核内蛋白であるNr4a1、Nr4a2、Nr4a3のいずれもが、治療後に比べて17倍から100倍高発現していた。これらNr4aファミリーの治療前骨髄単核細胞における高発現は、CsAに対する反応が遅かった2症例とCsAが無効であった2症例ではみられなかった。骨髄単核細胞におけるNr4aファミリー遺伝子の発現をTaqman probeを用いて定量したところ、三つのNr4a遺伝子の高発現は、CsAに対する反応性が早かった巨核球減少性血小板減少症2例と別の非重症再生不良性貧血患者のみに認められた。現在、Nr4aファミリー遺伝子高発現の意義を症例数を増やして検討中である。 一方、京都大学小川誠司教授との共同研究により、免疫抑制療法が奏効した再生不良性貧血患者9名を対象としてエクソームシーケンシングを行った。その結果、5症例においてPIGA変異以外の様々なミスセンス変異、フレームシフトが検出されたが、現時点では複数の症例に共通する変異は同定されていない。現在、症例数を増やして検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シクロスポリン療法の治療前後における骨髄単核細胞の遺伝子発現を網羅的に解析することにより、シクロスポリンに対する高反応性と関連する核内蛋白Nr4aファミリーの同定に成功した。末梢血単核細胞におけるNr4a遺伝子の高発現は多発性硬化症でも報告されており、IL-17の発現亢進にも関与していることから、自己免疫性骨髄不全の病態発生に関与している可能性が高い。 典型的な免疫病態による再生不良性貧血においても、9人中5人において様々な体細胞変異によるクローン性造血が存在することが明らかになった。各々の変異の意義を明らかにするためには今後の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
新規に発症した巨核球減少性血小板減少症や軽症再生不良性貧血患者を対象としてシクロスポリン療法を行い、反応例について昨年度と同様のマイクロアレイ解析を進める。また、様々な骨髄不全患者の骨髄単核細胞を対象としてNr4a遺伝子発現を定量し、この遺伝子高発現と、骨髄不全の免疫病態との関係を明らかにする。 エクソームシーケンシングについても、免疫抑制療法が奏効した患者を対象として症例数を増やして検討し、複数の症例に共通する体細胞変異の同定を試みる。
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