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2013 年度 実施状況報告書

悪性リンパ腫における微小環境依存性と治療開発に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25670449
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター)

研究代表者

直江 知樹  独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (50217634)

研究分担者 早川 文彦  名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (30402580)
島田 和之  名古屋大学, 学内共同利用施設等, 講師 (50631503)
冨田 章裕  名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80378215)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードトランスレーショナルリサーチ / 癌 / シグナル伝達 / 標準治療
研究概要

本研究では、①NOG マウスを用いてヒトびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(DLBCL)におけるホーミングと治療後残存に関わる微小環境(ニッチ)を探索し実証する。既に成功した線維芽細胞様細網細胞(FRC)株とDLBCL 細胞の組み合わせを用いて、②ニッチ依存性における分子メカニズム解明と③既知の薬剤ライブラリーを用いたスクリーニングを行う。
①7例の新たなリンパ腫患者由来マウス異種移植モデル(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫3例、血管内リンパ腫2例、マントル細胞リンパ腫1例、末梢性T細胞リンパ腫1例)を作製した。DLBCLの1例において、節性病変の腫瘍細胞をFRCとともに腹腔内移植することで生着が得られた。さらに興味深いことに、節性病変からのリンパ腫モデルではマウスの節外臓器にほとんど腫瘍細胞が得られず、腹腔内腫瘍に病変が限局していた。
②ヒトバーキットリンパ腫(BL)腫瘍組織初代培養系より樹立した新たなFRC株において、Ex vivoにおけるBL細胞とFRCとの共培養において、BL細胞の細胞増殖は有意に促進され、細胞死は有意に抑制された。BL細胞の細胞周期は促進されていた。さらに共培養下において変化するBL細胞のリン酸化タンパクを検討し、候補タンパクを質量分析によって同定した。これらの結果はDLBCLのみならず一部のBLもFRCをニッチとしている可能性を示唆している。
③患者細胞を移植した免疫不全マウス、Patient-derived xenograft (PDX)をDLBCLについて作成し、これから取り出したPDX細胞を間質系細胞株の上で培養するシステムを構築した。これに対し既存薬のライブラリ(抗癌剤を含む)を添加し細胞死を誘導する薬剤をスクリーニングした。既存の抗癌剤がほとんど薬効を示さない中、蟯虫駆除薬として知られる薬剤等が高い抗腫瘍活性を示す事を見いだした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新たにヒトリンパ腫検体を異種移植することで7例の新たなマウスモデルを作製し、従来リンパ腫細胞をFRCと共に腹腔内移植することで、従来生着が得られていなかった節性病変からの腫瘍細胞の生着に成功した。リンパ節病変の腫瘍細胞をFRCとともに共培養することで、Ex vivoにて従来よりも高率に培養が可能であることも見出した。
ヒトリンパ腫腫瘍組織より樹立したFRCと由来となった腫瘍細胞との相互作用の検討より、FRCが腫瘍細胞の生存に関与していることを確認し、相互作用に関与しているタンパクについて同定した。
従来の薬剤スクリーニングが細胞株という現実の腫瘍と異なる性質(急激な増殖、微小環境非依存性など)を持つ細胞株を用いて行われる事がほとんどであるのに対して、細胞株よりもヒトプライマリ腫瘍細胞により近い性質を保持しているPDX細胞を用いたスクリーニングシステムを確立できた。PDX細胞に対しては既存の抗癌剤は細胞株で予想される程には効果を示さない事が明らかになる中、高い抗腫瘍活性を示す薬剤も発見され、研究の目的は良好に達成されている。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、節性病変からの異種移植モデル作製により力点をおき、①検体採取時に移植を行う、②Ex vivoでのリンパ腫細胞の増幅が得られてから移植を行うなど複数の方法にてマウスモデルの作製を試みる。節性病変からのリンパ腫モデルが複数作製された際には、マウスモデルにおけるリンパ腫病変を病理学的に評価し、節外病変からのマウスリンパ腫モデルとの差異について検討し、リンパ節におけるリンパ腫細胞のニッチ依存性を検討していく。
リンパ腫の微小環境を構成する細胞株を複数樹立し、樹立された細胞株と新規罹患者より採取されたリンパ腫細胞との共培養を継続的に検討することによって、リンパ腫細胞のニッチ依存性の実臨床における重要性を評価する。さらに平成25年度において同定したタンパクの機能を解析し、治療標的としての可能性を探索する。
PDX細胞スクリーニングで発見された蟯虫駆除薬等の抗腫瘍活性を示す薬剤が、どのような作用機序を持っているのかを検討する事で、現実の腫瘍にはどのような作用機序を持つ薬剤が有効であるのかを探索していく。腫瘍細胞への直接の作用に加え、間質細胞や、間質細胞から腫瘍細胞への生存支持作用等を標的にしている可能性を想定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] De novo DLBCL with a CD20 IHC(+) and FCM(-) phenotype: molecular mechanisms and correlation with rituximab sensitivity.2014

    • 著者名/発表者名
      Tokunaga T, Tomita A, Sugimoto K, Shimada K, Iriyama C, Hirose T, Shirahata-Adachi M, Suzuki Y, Mizuno H, Kiyoi H, Asano N, Nakamura S, Kinoshita T, Naoe T.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 105(1) ページ: 35-43

    • DOI

      10.1111/cas.12307. Epub 2013 Dec 22.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Functionally Deregulated AML1/RUNX1 Cooperates with BCR-ABL to Induce a Blastic Phase-Like Phenotype of Chronic Myelogenous Leukemia in Mice.2013

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto K, Tsuzuki S, Minami Y, Yamamoto Y, Abe A, Ohshima K, Seto M, Naoe T.
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: 8(9) ページ: e74864

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0074864

    • 査読あり
  • [学会発表] リンパ腫細胞環境をターゲットする薬剤開発2013

    • 著者名/発表者名
      杉本慶樹、早川文彦 直江 知樹
    • 学会等名
      日本癌学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      20131003-20131005

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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