MLL融合蛋白質は「外的環境に影響を受けずにこれまでに発現していた遺伝子を再活性化するメカニズム」を介して、ニッチ非依存的に自己複製を促進し、白血病を引き起こす。MLL融合蛋白質複合体が特定の「過去に転写された遺伝子」を認識するために必要な共作用因子を同定するために、我々はまずMLL融合蛋白質複合体の構成因子であるLEDGFがクロマチン上で形成する複合体を解析する事に取り組んだ。具体的にはLEDGFを293T細胞に発現させ、その共作用因子を質量分析によって同定するという実験を行った。その結果、既知のLEDGF結合因子に加えて、十種類程度の新規結合因子が同定された。LEDGFは自身に含まれるPWWPドメインを介してクロマチンと結合していることから、次にPWWPドメインが結合しているヌクレオソームとその他の共作用因子を質量分析にて解析した。その結果PWWPドメインはH3K36me2/3に特異的に結合していることが確認されたが、他の共作用因子は同定されなかった。これまでの解析の結果、LEDGFがPWWPドメイン以外の構造を介してクロマチン上で結合する因子の機能によって特定のクロマチンにリクルートされると考えられる。今後は同定された新規結合因子の機能を一つ一つ解析することでMLL融合タンパク質が特定のクロマチンを認識するメカニズムが明らかになると期待される。
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