研究課題
造血幹細胞老化の特徴であるリンパ球産生障害に関与する候補分子として同定したSpecial AT-rich sequence binding protein 1 (SATB1)とsecreted Frizzled-related protein-5 (sFRP-5)について、生体内役割とくにリンパ球初期分化に及ぼす作用を解析した。生体においてSATB1の発現を蛍光色素tomatoでモニタリングできるレポーターマウスを作製した。そのマウスでは、リンパ球系前駆細胞のみならず造血幹細胞分画におけるSATB1の発現変化をも観察することができた。FACS解析で、高純度の造血幹細胞分画においてもSATB1の発現レベルは不均一であることがわかった。培養実験にて、造血幹細胞分画の中のSATB1陽性群は、増殖能とリンパ球産生能が高いが、赤血球系への分化能力を減弱していることが示された。一方、Tie2-Creを用いた条件付き-Satb1欠損マウスの解析結果は、生体における造血幹細胞の正常な分化において、SATB1が必須であることを示した。Wnt関連分子であるsFRP-5を成獣のみが発現するトランスジェニックキメラマウスを作製し、リンパ球産生などの生体内役割について解析した。このsFRP-5を過剰に発現するマウスでは、共通リンパ球前駆細胞以降のBリンパ球が著明に減少していた。一方、sFRP-5欠損マウスでは、共通リンパ球前駆細胞を含むBリンパ球前駆細胞が減少していた。以上より、sFRP-5は造血幹細胞を含む極早期リンパ球分化に必須ではあるが、過剰なsFRP-5はBリンパ球分化を阻害することが明らかにした。
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Eur J Immunol
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Int J Hematol
巻: 100 ページ: 238-245
10.1007/s12185-014-1602-2