研究課題
腫瘍細胞の急速な増殖にはコレステロールの取り込み増加が必須とされ、コレステール代謝制御は、新規抗がん剤開発のターゲットとなりうる。シクロデキストリン (CyDs) は、内腔に種々の分子を包接する環状オリゴ糖であり、実験系では細胞膜脂質ラフトからコレステロールを引き抜き、その構造を破壊するのに用いられる。私達は、小児の難治性脂肪蓄積病、Niemann-Pick病C型の治療薬としても既に使われている2-ヒドロキシプロピル-β-CyD (HP-β-CyD) に着目し、その抗腫瘍効果を検討した。様々な白血病細胞株に対するHP-β-CyD のIC50は3.86-10.09 mMで、イマチニブ耐性株 (KBM-5/STI, MYL-R) でも親株とほぼ同等であった。また、HP-β-CyDの細胞増殖抑制効果にはアポトーシスとG2/M期での細胞周期停止が関与していた。HP-β-CyDは白血病細胞からコレステロールを引き抜くが、代表的なラフト阻害剤、メチル-β-CyDよりもその作用は弱かった。さらに、T315I変異を有するCML細胞株や、白血病幹細胞様性質を示す低酸素適合細胞株に対しても強い増殖抑制効果を示した。BCR-ABL白血病マウスモデル(同種、異種移植とも)を用いたHP-β-CyD投与実験では、HP-β-CyD投与群においてvehicle投与群と比較し、有意な生存期間の延長を認め、かつHP-β-CyD投与に伴う溶血などの有害事象は明らかではなかった。以上より、HP-β-CyDはコレステロールを標的とする、副作用の軽微な抗がん剤として有望である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)
日本輸血細胞治療学会誌
巻: 60 ページ: 12-17
巻: 60 ページ: 32-37
Leuk Lymphoma.
巻: 55 ページ: 1215-1217
10.3109/10428194.2013.
PLoS One.
巻: 8 ページ: e57833
10.1371/journal.pone.0057833.
Stem Cell Biology in Normal Life and Diseases
巻: 1 ページ: 3-16
10.5772/55639.
巻: 59 ページ: 73-78