研究課題
挑戦的萌芽研究
本年度はまず、Tert欠損マウスを用いたテロメレースに関するPot1aの機能の解析を行った。野生型及びTert欠損マウス由来造血幹細胞に対し、レトロウイルスベクターを用いてPot1aを導入し、長期骨髄再構築能の比較を行った結果、Pot1a導入群はコントロール群と比較して有意に高い骨髄再構築能を示した。Pot1aの作用がテロメレースとの相互作用を基にしたものである場合、Tert欠損群の骨髄再構築能は、Pot1aの導入を行っても野生型群のような向上は見られないことが考えられるが、本研究結果からPot1a導入群での骨髄再構築能の向上が見られることから、外因性Pot1aの効果はテロメレース非依存性であることが示唆された。また一方、外因性Pot1aが造血幹細胞のテロメア長に与える影響を検討するため、Pot1aを導入した野生型およびTert欠損マウス由来造血幹細胞を移植し、ドナー由来造血幹細胞のテロメア長の比較を行った。その結果、4群のテロメア長にいずれも有意差はなく、Pot1aがテロメレースの持つテロメア伸長活性に対する影響はないことが示唆された。さらに我々は、外因性細胞膜透過性タンパク質MTM-Pot1aを添加する培養条件にて、マウス造血幹細胞の体外増幅を行い、さらに限界希釈法を用いてその骨髄再構築活性の定量を行った。その結果、MTM-Pot1aを添加した群では約2.8倍の幹細胞活性を有することが分かった。またMTM-Pot1a処理によって得られた造血幹細胞のテロメア領域におけるDNA損傷応答を基準にその安定性を検討したところ、MTM-Pot1a添加群では有意にDNA損傷応答を抑制していることを見出した。本研究の知見から、DAN損傷応答の抑制を介した新たな幹細胞増幅の基盤技術につながることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、外因性Pot1を用いた造血幹細胞の体外増幅という当初の目的に対し、マウス造血幹細胞においてその機能の解析および効果の証明を行うことができた。これらの成果を基盤として、平成26年度はヒト造血幹細胞の増幅に挑戦することが可能となったことから、進展がみられたと考えられる。
今後はヒト造血幹細胞に対し外因性POT1による体外増幅を試み、その作用機序と幹細胞活性への影響を検証していく。また本研究における造血幹細胞が未分化性の維持と増殖を同時に起こす機構として、外因性Pot1aにおける新規の機構を見出すため、外因性Pot1aに対する細胞内の結合分子を分子生物学的手法(免疫沈降・電気泳動・質量分析)により同定する。得られた分子の造血幹細胞における機能は、造血幹細胞にこれらを遺伝子導入し、骨髄再構築能を比較する。この検討を行うことにより、外因性Pot1aの効果を支持する分子機構を同定できると考えられる。
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