研究実績の概要 |
本研究の目的は、繰り返し免疫するときに血中に増加する脂溶性因子がIgG抗原特有なアナフィラキシーを抑制する機構を解明し、抗体エフェクター機能における糖鎖部分の構造変化との関連を明らかにすることである。 マウスに卵白アルブミン(OVA)を繰り返し注射し免疫すると、アナフィラキシーを起こす個体が見られるが、血清中の抗OVA抗体IgGを精製し、Fc領域の糖鎖を除去したIgGをマウスに静注しておくと、OVAを再度注射すると引き起こされるアナフィラキシーショックが顕著に抑制されることを見出した(Guo et al., Biomed. Res., 2003)。また、このときのマウス血中の抗OVA抗体IgGに付加する糖鎖へのフコース付加が特異的に増加してくることを見出した(Guo et al., Clin. BiocChem., 2005)。フコース付加は抗体のエフェクター機能を抑制することが知られており、抗OVA抗体IgGの細胞傷害活性(ADCC活性)を低下させると考えられる。本研究では、繰り返し免疫で血中に増加する脂溶性因子を含む画分を精製し、OVAと同時にマウスに静注するとアナフィラキシーショックが顕著に抑制されることを見出した。繰り返し免疫していないマウスから同様の分離操作で得た脂溶性画分にはそのような効果が認められないことから、繰り返し免疫の後に血清中にアナフィラキシー反応を制御する未知の脂溶性因子が産生していると考えられる。これまでに、繰り返し免疫後の血清をクロロホルム/メタノールで抽出後、DEAEカラムクロマトグラフィーにより分画した300mM NaCl画分にアナフィラキシー抑制効果の最も高い因子が溶出することを確認した。さらにこの画分が特定のレクチンに対して反応性を示すことをELISA法により分析し、この脂溶性因子が糖鎖を含んでいる可能性を示した。
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