研究課題
挑戦的萌芽研究
近年のゲノム解析研究により、多くの膠原病で、疾患感受性遺伝子が明らかになってきた。一方、トランスクリプトーム解析では、全身性エリテマトーデス(SLE)を始めとする各種膠原病において、I型インターフェロン経路の活性化(type I IFN signature)が報告されている。しかし、SLEにおいても、type I IFN signatureが観察されるのは半数前後との報告も存在し、トランスクリプトームによって規定されるサブセットの存在が示唆される。本研究は、膠原病患者群内におけるトランスクリプトームによるサブセットと、それに関連するゲノム多型を見出し、膠原病の病態を規定する鍵分子を検出することを目的として開始した。抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)は、ANCAの特異性により、myeloperoxidase (MPO)-ANCA陽性AAV、proteinase 3(PR3)-ANCA陽性AAVに分類されるが、これらのトランスクリプトームの違いに関する研究はこれまでほとんど見られない。本年度は、I型インターフェロンや炎症性サイトカインの発現を誘導するIRF5の発現量に関連するSNPとAAVとの関連を検討し、MPO-ANCA陽性AAVでは、SLEなど他の膠原病とは異なり、IRF5の低発現型がリスクに関連することを見出した。この傾向はPR3-ANCA陽性AAVでは見いだされておらず、IRF5がAAVの病型を決定する一つの因子である可能性が示唆された。以上の結果を受け、本研究においては、SLEとともに、AAVも対象とすることとし、研究協力施設に依頼し、活動性SLE、AAV検体収集を開始した。現在までに8検体が収集されている。
3: やや遅れている
SLE, AAVそれぞれ10例を目標に、複数の臨床施設の協力を得て、トランスクリプトーム解析試料の収集を行っているが、活動性SLE, AAVが稀少であり、現在まで、合わせて8検体にとどまっている。トランスクリプトーム解析は全検体を同時に解析することが適切であるため、次年度に施行することとした。
研究協力施設を増やして検体収集を進める。平成26年10月までに収集しえた検体でトランスクリプトーム解析を行い、SLEとAAV、MPO-ANCAとPR3-ANCAの比較、SLE群内にサブセットが見られるかどうかを決定する。合わせて、これらの検体の多型解析を施行し、各病型とトランスクリプトームの関連、トランスクリプトームとゲノム多型の関連を解析する。
当初、活動性SLEを対象としてトランスクリプトーム解析を予定し、研究協力施設に呼びかけて検体収集を試みたものの、予想外に対象となる患者が少なかった。このこと、および、AAVにトランスクリプトームによるサブセットが存在する可能性を示唆する知見が得られたことにより、対象をAAVにも広げ、SLEとあわせ、平成26年度も検体収集を継続することとした。全検体を一度に解析することが適切であるため、平成25年度にトランスクリプトーム解析のために予定した使用額を次年度に持ち越し、平成26年度に、SLEおよびANCA関連血管炎両方のトランスクリプトーム解析を実施する計画とした。次年度使用額に加え、平成26年度申請額の一部を使用し、SLEおよびANCA関連血管炎のトランスクリプトーム解析を施行する。このために、約210万円の研究費を使用予定である。その後、免疫系遺伝子を対象とした多型解析を施行し、遺伝子多型とトランスクリプトームの関連を解析する。このために約60万円を使用する計画である。
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Ann Rheum Dis
巻: in press ページ: in press
10.1136/annrheumdis-2013-204581
Genes Immun
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10.1038/gene.2013.45.
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