疾患活動性と考えられた全身性エリテマトーデス(SLE)9例、ANCA関連血管炎(AAV) 8例(うち6例がMPO-ANCA陽性)、健常対照群15例の全血からtotal RNAを抽出し、SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8x60K (Agilent)を用いたトランスクリプトーム解析を、受託解析により施行した。クラスター解析の結果、SLE群、AAV群、健常対照群のクラスターに明確に識別され、健常対照群に群分けされた免疫抑制療法導入直後のSLE 1例以外は、すべての検体が例外なく該当するクラスターに群分けされた。 パスウェイ解析では、SLE群、AAV群のいずれにおいても、I型インターフェロン・パスウェイ遺伝子群の発現亢進が観察されたが、SLE群においてより顕著であった。 また、SLE群、AAV群においてそれぞれ特異的な発現亢進を示す遺伝子群が検出された。さらに、各群間で発現レベルの差が認められる遺伝子においても、群内の個体間におけるばらつきの大きな遺伝子が観察された。 以上の結果から、日本人集団における活動性SLE、MPO-ANCA陽性血管炎患者におけるmRNA 発現プロファイル解析は、日本人集団の遺伝的背景における病態関連遺伝子、バイオマーカー検出上、有用性が高いことが示唆された。また、機能的意義を有する疾患感受性遺伝子多型の同定上、有用な基礎データを得ることができた。 本挑戦的萌芽研究の結果により、今後、さらにサンプルサイズを増やした解析により、詳細なパスウェイ解析を行うとともに、疾患関連遺伝子多型と発現プロファイルとの関連の解析、さらには、発現プロファイルデータに基づく新規疾患関連候補遺伝子の設定と解析を進めることにより、各疾患に特徴的な発現プロファイルの原因となり得る「鍵分子」の同定の実現が可能であると考えられた。
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