研究課題/領域番号 |
25670460
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
門脇 則光 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60324620)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / I型インターフェロン / 小胞輸送 / キナーゼ |
研究実績の概要 |
形質細胞様樹状細胞(pDC)は、取り込んだToll-like receptor (TLR)9リガンドCpG DNA を早期エンドソームに滞留させることにより、大量のインターフェロン(IFN)-alphaを産生する。Srcファミリーキナーゼ(SFK)およびそれ以外の多数のキナーゼを阻害するダサチニブは、CpG DNA の早期エンドソームへの滞留を阻害することにより、pDCによるIFN-alphaの産生を阻害する。その際の責任キナーゼを絞り込むために、さまざまなキナーゼ阻害剤の存在下にヒトpDC腫瘍由来細胞株P716をCpG DNAで刺激し、培養上清のIFN-alphaをELISAにて測定した。まず,キナーゼをSFKとnon-SFKに分けて考えた。ダサチニブで強く抑制されるキナーゼのうち、SFK、及びイマチニブ・ニロチニブで阻害されないキナーゼのうち、5種類以上を阻害する阻害剤として、EGFR/ErbB-2/ErbB-4 inhibitor (HDS 029), Go6976, Cdk1/2 inhibitor III, GSK3beta inhibitor XII (TWS119), EXEL-2880/GSK-1363089 (Foretinib), Staurosporineの6つのキナーゼ阻害剤を選択した。これらの阻害剤を用い、候補キナーゼを35に絞り込んだ。そのうち、①ダサチニブによる阻害程度が強いと報告されている、②pDCに強く発現する、③小胞輸送に重要なアクチン重合に関連すると報告されている、という基準で、候補キナーゼを11に絞り込んだ。さらに、これらのキナーゼをsiRNAでノックダウンしIFN-alpha産生が低下するキナーゼとして、TESK1, LIMK1, RIPK2の3つを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数のキナーゼ阻害剤を有効に組み合わせて、pDCのIFN-alpha産生に必要で、かつ小胞輸送に関わると予想されるキナーゼをTESK1, LIMK1, RIPK2の3つまで絞り込んだことは、CpG DNA をpDCの早期エンドソームに滞留させIFN-alpha産生を誘導するキナーゼ-基質系を同定するうえで大きな前進である。一方で、すべての実験に用いているpDC細胞株P716の増殖やIFN-alpha産生能が安定せず、細胞の起こし直しや再現性の確認を繰り返すことを余儀なくされたため、当初予定していたリン酸化プロテオーム解析による基質の同定に着手できていない。このことから、研究の進捗が予定よりやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
連携研究者・石濱 泰教授の協力を得て、LIMK1, TESK1, RIPK2のpDCにおける基質を、P716を用いたリン酸化プロテオーム解析にて同定することにより、pDCによるIFN-alphaの産生に必要なキナーゼ-基質の組み合わせを明らかにする。また、これらのキナーゼと基質をsiRNAでノックダウンすることにより、これらの分子がCpG DNAの早期エンドソームへの滞留を引き起こしているかどうかを共焦点顕微鏡にて調べる。 上記3つのキナーゼはpDCのみならず広汎な細胞に発現するため、基質にpDC特異性があるかもしれない。そうなれば、その基質がpDC特異的な抗炎症薬の標的になることが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
すべての実験に用いているpDC細胞株P716の増殖やIFN-alpha産生能が安定せず、細胞の起こし直しや再現性の確認を繰り返すことを余儀なくされたため、当初予定していたリン酸化プロテオーム解析による基質の同定に着手できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
リン酸化プロテオーム解析、およびそれに続くsiRNAノックダウン、共焦点顕微鏡による細胞観察に使用する。
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