研究課題/領域番号 |
25670463
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
村口 篤 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20174287)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染症 / 癌治療 / リンパ球チップ / 抗体 / T cell receptor |
研究実績の概要 |
1)抗原特異的T細胞の単一細胞の迅速検出法(T-ISAAC)の確立を目的として、H-2Kb MHC class I 分子に結合した卵白アルブミン(OVA)ペプチド特異的TCR を発現したOT-1 TCR トランスジェニックマウスおよびH-2Db MHC クラスⅠ分子に結合した雄特異的H-Y 抗原を認識するTCR を発現したH-Y TCR トランスジェニックマウスを用い、リンパ球チップで、ペプチド刺激によるサイトカイン産生を検出した結果、ペプチド特異的、濃度依存的にスポットを検出できた。シングルT細胞を回収し、TCR遺伝子を解析することができた。これまで、遺伝子の増幅率が低さが課題であったが、今回、新しい増幅術の開発(ONE STEP RT-PCR法)により増幅率を格段にあげることが可能となった。また、ヒト健常人のEBV潜伏感染者の末梢血CD8陽性Tリンパ球をEBVペプチドでチップ内で刺激した結果、ペプチド特異的にスポットを検出することができた。シングル細胞からTCR遺伝子を解析した結果、ペプチド特異的TCR候補を多数、獲得できた。すなわち、T-ISAACの基盤が確立できた。 2)取得TCRの機能解析法の確立:取得したTCRの機能を解析することを目的として、あらかじめ、TCR欠損のCD3陽性T細胞株(TG40)にヒト/マウスのCD4あるいはCD8遺伝子を導入し、次に、TG40に増幅したEBV特異的TCR遺伝子を相同組換え法により発現ベクターに組込み、レトロウイルスを用いて導入した。TCR/CD3分子の発現は抗CD3抗体で確認した。この細胞株をペプチド/MHCで刺激し、細胞の活性化(サイトカイン産生あるいは活性化マーカー)を検知することで、取得したTCRが機能を測定可能となる。すなわち、これまでの研究成果により、単一細胞から取得したTCRの機能解析法の基盤を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のゴールは、抗原特異的T細胞の検出から、TCR遺伝子の取得・機能検証までを全体として10日間以内で行える画期的なシステムを確立することである。今回、①H-2Kb MHC class I 分子に結合した卵白アルブミン(OVA)ペプチドを認識するTCR を発現したOT-1 TCR トランスジェニックマウスおよびH-2Db MHC クラスⅠ分子に結合した雄特異的H-Y 抗原を認識するTCR を発現したH-Y TCR トランスジェニックマウスを用い、細胞チップを用いて、ペプチド刺激によるサイトカイン産生を検出した結果、ペプチド特異的、濃度依存的にスポットを検出できた(cis-activation)。また、ヒト健常人のEBV潜伏感染者の末梢血CD8陽性Tリンパ球をEBVペプチドでチップ内で刺激し、同様に、ペプチド特異的にスポットを検出できた。。すなわち、T-ISAACの基盤が確立できた。さらに②取得したTCRの機能を解析することを目的として、あらかじめ、TCR欠損のCD3陽性T細胞株(TG40)にヒト/マウスのCD4あるいはCD8遺伝子を導入し、次に、TG40に増幅したEBV特異的TCR遺伝子を発現ベクターに組込み、レトロウイルスを用いて導入し、TCR/CD3分子の発現を確認できた。すなわち、これまでの研究成果により、単一細胞から取得したTCRの機能解析法の基盤を確立することができた。このように、研究は概ね計画どおり進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
【1】単一細胞から取得したTCRの機能解析法の確立:取得したTCRの機能解析システムを確立することを目的として、1)あらかじめ、TCR欠損のCD3陽性T細胞株(TG40)にヒト/マウスのCD4あるいはCD8遺伝子を導入し、次に、TG40に増幅したEBV特異的TCR遺伝子を相同組換え法により発現ベクターに組込み、レトロウイルスを用いて導入し、TCR/CD3分子を発現をさせる。2)次に、TCR導入TG40細胞を、ペプチドを発現させた抗原提示細胞あるいはMHC/ペプチドで刺激し、活性化マーカーCD69の発現をFACSで測定、あるいはIL-2産生能をELISAで測定することで、TCRの機能を解析する。この解析法が確立されれば、抗原特異的T細胞の検出から、TCR遺伝子の取得・機能検証までを全体として10日間以内で行える画期的なシステムが確立される。 【2】金沢大学(水腰研究室)では、肝臓がんを中心にペプチドワクチン療法を進めている。金沢大学と共同し、効果が確認された患者よりリンパ球を採取し、ペプチドワクチン特異的T 細胞をT-ISAAC法を用いて検出し、TCR を取得し、抗原特異性およびCTL活性をhTEC10システムで解析する。金沢大学(水腰研究室)にて、がんの治療に応用すべく研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞チップを用いた解析が順調に進み、試薬の購入が当初予定よりも少なく済んだ。また、成果発表を予定していた学会に日程の都合で参加できず、旅費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
金沢大学との共同研究を加速するため、試薬等を多く購入予定である。また、最終年度のため成果発表のための学会参加・論文投稿を積極的に行う。
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