研究課題
1)単一細胞から取得したTCRの機能解析法を確立することを目的として、ヒトのEBV特異的TCR遺伝子を相同組換え法により発現ベクターに組込み、TCR欠損CD3陽性CD8陽性T細胞株(変異TG40)にEBV特異的TCR/CD3分子を細胞表面に発現させた。次に、TCR導入変異TG40細胞を、EBVペプチドを発現させた抗原提示細胞あるいはMHC/ペプチドテトラマーで刺激し、活性化マーカーCD69の発現をFACSで測定、同時にIL-2産生能をELISAで測定した。その結果、EBVペプチド特異的にEBV特異的TCRを発現させたTG40変異細胞にCD69が発現し、またIL-2産生が見られた。このように、抗原特異的T細胞の検出からTCR遺伝子の取得・機能検証までを全体として10日間以内で行える画期的なhTEC10システムを確立できた。2)金沢大学(金子研究室)との共同により、hTEC10システムを用いて、肝細胞がん患者の末梢血T細胞からα-フェトプロテイン(AFP)特異的TCRの取得を行った。ペプチドワクチン療法で効果が認められた肝細胞がん患者の末梢血T細胞を得て、AFPペプチド・MHCテトラマーに反応するT細胞からTCR遺伝子を単離し、上記1)の方法で機能を解析した。その結果、数個のペプチドワクチン特異的TCRを獲得できた。次に、このTCRを末梢血T細胞に遺伝子導入してTCRを発現させ、AFPペプチドを負荷した抗原提示細胞を標的として細胞傷害活性(キラー活性)を測定したところ、ペプチド特異的にキラー活性を認めた。このことは、hTEC10システムにより、がん患者からキラー活性を持つTCRを極めて短期間に取得できることを実証したものであり、がんのTCR遺伝子治療への道を開くものとして注目すべき成果である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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